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序章 梢の雪
―――魔導士。
それは祖国を守るもの。自らの魂を削り、剣として盾として立つ、尊き戦士たち。
人智を超越し、故にその力の先を違えれば禍福はいとも容易く覆る。
『…お前は、戦なんてもん…向いちゃいない』
冬を越えて、ようやく木々が芽吹き始めたばかりの季節。
庭で唯一花を咲かせた木の根元に横たわる老人は、力なく幼子の頬を撫でた。
朝方僅かに降って積もった純白の雪が、じわじわと鮮紅に侵されてゆく。
梢が震える。雪とともに数枚の花びらが舞った。
『……ユウハ』
―――どうか、自由に生きなさい。
それが祖父の遺した、最後の言葉であった。
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