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灰色に白んだ言葉はカプチーノみたいな色してる。 窓の外には降りしきる雨。雨粒が窓を揺らして、静かにその声音を伝わせる。外の景色は滲んで消えた。よく磨かれたステンレスの机はその姿をよく映して、私と僕をたしかに分かつ。 僕は項垂れてて。情けない言葉を重ねて。卑しい。愚かしい。それでもね。 「言い訳はいいよ」 私はおどけたふりしてカプチーノを呷った。口いっぱいに広がるほろ苦さはいつだって私の脳髄を麻痺させる。目の前の僕が可愛いく思えてしまうほどに。八月のヴィスビーのように、いつだって、その心を待ちぼうけしてる。そんな私に酔えるほどに。 ずっと前から狂った歯車。おかしくなった私と僕。私はただ、生き方を知りたいだけなの。私はただ、何もなしには生きれないだけなの。 「もう払えるものなんて僕にはない」 それでもいい。それなら言葉一つでいい。私にはわからないから。本当にわからないふりが出来るから。言葉なんて読みとかなきゃいいだけ。口から出る言葉に託せる愛なんていくらでも作れるでしょ。僕はそうやって私を選んだでしょ。 「……ごめん」 それでも、僕は。君はもう。 揺蕩うように、雨が流れて。瞼の裏に雨が消えて。ずっと狂った歯車を君は治しもしないで。私はまだ、誰も褪せないような花を一人で胸の内側にさしてる。君を忘れないための花を、私だけ。 「……そっか」 また一つ夏が終わって。また一つ花を抱いて。私は、もう枯れた花畑にまだ水をやり続けている。どうか。どうか、君が溢れないように。 世界は未だ、雨に閉ざされて。 #ヨルシカ『雨とカプチーノ』
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