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彼は私が初めて愛した人だった·····。
橘 景吾彼とは友人に誘われた合コンで知り合った。各々に軽めの挨拶を交わし次第に合コンは、盛り上がり流れで二次会に行くことになった。
友人の1人が『今日は当たりだね』なんて上機嫌で話してるのを耳したものの、私は差程、興味もなく場の空気に合わせ終電前には帰ろうと考えていた。
案の定、友人達は1人また1人と相手を決めて抜けていく。そうしている間に、何時しか最後に残ったのは私 宮部 愛咲と彼だけだった。
「·····私達だけになっちゃいましたね」
気まずさからか私はグラスに入ったワインを一気に飲み干した。·····実はこの時、私は既に大分、酔っていて正直、自分の言動に不振な点があることに気づいてさえいなかった――――。
「さぁ!私達も帰りましょう」
「·····あの!!」
不意に握られた手の感触。優しい手の温もり·····男性的な少しゴツゴツとした男らしい手に包まれていると、何だかとても心地よく甘えたくなる擽ったさを感じた。
彼からは緊張感がストレートに伝わってきて私まで変に意識してしまい「はいぃっ!」と声が変に裏返ってしまった。
「ぷはっ·····」
口元を咄嗟に抑えるも間に合わず、彼は満面の笑みを浮かべ笑っている。その少年のようなあどけなさに胸の奥がキュン締めつけられ、そして熱を帯びた。
「あっ·····すみません。悪気があった訳ではないのですか。その·····」
何やらモジモジと顔を赤らめ言い難い様子で私の表情をチラチラと気にしている。
「·····正直にいいますね」
「はい。なんでしょうか?」
彼は真っ直ぐ私の目を見つめて·····
「お会いした時から、ずっとあなたの事が気になっていました。2人で話せたらと声を掛けるタイミングを伺っていたのですが中々、上手くいかず·····。実は、こういうことに不慣れでして。·····それで、その、もし宜しければ、この後お店を替えて飲み直しませんか?」
思ってもいなかった彼からのアプローチに、私は迷うことなく即答で「喜んで」と返していた。
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