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黒百合
クロユリには伝説がある。
それは古くからアイヌに伝わる伝説。
想いを込めたクロユリを好きな相手に贈る。相手が、そのクロユリに触れた時――。
いつしか願いが叶えられ、二人は永遠に結ばれるだろう――。
俺の目の前には冷たくなった恋人。
些細なことで口論となり
何時しか俺は、彼女の首を絞めていた。生々しく残る手の感触·····。
苦しさ故か、バタバタと足を動かし苦痛と恐怖に歪む彼女の顔は、今まで見てきた、どんな顔よりも好ましく、欲情した。
彼女の瞳に映る、獣のような自分の姿に酔いしれ、笑みさえ零れた―――。
俺は·····俺は·····この世で一番、大切な、愛した人の【命】を奪ってしまった。
人形のように動かなくなった彼女へ
クロユリを贈った――――。
「永遠に君は俺のものだよ」
彼女の瞳に、二度と俺は映ることはない。
彼女の耳元で、そっと囁いた。
何度も·····何度も·····何度も····
――――そう。
まるで呪文のように愛を込めて。
――END――
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