六月の花嫁

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六月の花嫁

ジェーンブライド 六月の花嫁。 私は今日、結婚する――はず·····だった。 沢山の白い紫陽花の花が、あちらこちらに飾られ、美しくさに拍車をかける。 煌びやか装飾品に彩られた室内。 聖母マリアが描かれたステンドグラスが太陽の光に照されキラキラと目映く輝く、美しい空間。 パイプオルガンの音色がウエディングマーチを奏で、二人を祝福すると小鳥達の囀りさえ愛おしく思えるだろう。 ――病める時も健やかなる時も―― ――富める時も貧しき時も―― ――夫として愛し敬い―― ――慈しむ事を誓いますか?―― 神への誓いの言葉·····。 「私の中に神なんていないもの·····」 ◇◇◇◇◇◇ 白い紫陽花の花言葉は 【寛容】 心が寛大で人を受けいれること。 過失を咎めたてず、人を許すこと。 彼は私の全てを受け入れ家族の輪の中へ招き入れた。 紫陽花は色によって花言葉も異なる。 【ピンク】元気な女性。強い愛情 【青】冷淡。無情。辛抱強い愛情。 他にも 移り気。浮気。変節。 一方で 和気あいあい。家族団欒。など、ポジティブな花言葉もある。 可愛らしく、小さな花が集まって咲いているようにみえることが由来と言われ、紫陽花は家族がいつまでも仲良くいたい。そんな切な願いも込められている。 きっと·····私に似合う色は【青】だろうと心の中で呟いた。 ――冷淡、無情·····。 今から結婚式を挙げる花嫁の言葉にしては重すぎる。けれど·····持って生まれた性分に勝るものはなく―――― 私は――――。 「·····冷淡に無情に。貴方以外の人と·····交わり求め、恋をする、そして誰からも束縛される自由に女を謳歌する」 ――移り気―― 私の心の中に、もう貴方はいないもの 恋多き女の性 愛した男は数知れず·····。 交わした口付けと流した涙の味は、どれも芳醇なワインのように濃厚で味わい深く、美味だった。 ―――そう――― だって私は·····。 「サキュバスだもの」 愛する事も恋する事もcrazyに私を染める。 失う物は多いけど得る快楽だけが私を支配し誘惑へと誘う。 人は哀れだと罵るけれど構わない。 人なんて所詮は欲望の塊なのだから。 誰も私を責める事は出来やしないもの。 ―END―
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