寄り添う心

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寄り添う心

リンドウの花言葉には「勝利」「正義感」「あなたの悲しみに寄り添う」「寂しい愛情」などがある。この言葉の数々は昔から薬草として利用され「病気に打ち勝つ」というイメージを連想させる。 「あなたの悲しみに寄り添う」 「寂しい愛情」は群生せずに単独で自生する特性からつけられたものだ。 私にも長年連れ添った夫がいた。 私達に子供はなく時代の流れと共に、お互いに溝ができ次第に心は離れていった。 1度、離れた心が元通りになることはなく、私達の夫婦生活は意図も容易く何年も掛けて築きあげてきた愛も絆も簡単に崩れ無くなった。 ――――気づいてしまった。 夫が私を愛していないことに·····。 いや·····もう、とっくに気づいていたんだ。気づいていたからこそ、私は現実から逃げたかった。 月明かりに照らされたテラスに独り、独りぼっちの心に空いた大きな穴は、とてもとても深くて、ちっぽけな小さな自分が、あまりに惨めで滑稽に思え涙が溢れた。 三十路すぎた女の悲しい末路·····。 強がって大人ぶって、素直になれない 可愛げのない女·····。 空っぽになった心の穴を埋める術を、私は何一つ持っていないことを痛感した。
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