キミに贈る言葉

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 たとえば、砂漠の真ん中に一輪だけ咲く花があったとして―――。  その花を見て人は何を思うのだろう。ある人は美しいと思うかもしれないし、別の誰かは悲しいと思うかもしれない。また、ある人は怖ろしいと感じることだってあるだろう。それに、同じ人間であっても、それを見た時に置かれていた状況や精神状態、体調なんかによっても全く異なる印象を抱くはずだ。  だとすれば、一つの花に、ある定まった言葉を持たせるというのはとても困難なことではないだろうか。  真夜中、机の上の花を今僕は見つめている。  それでも考えなくてはいけない。  僕の目の前に咲くこの一輪の花は、主にどのような印象を与えるだろうか。もはや、僕はこの花を客観的に見ることはできなくなっていた。  ふと視線を部屋の隅に向けた後で、僕は目を閉じ、苦悩の表情を浮かべる。  それでも決めなくてはいけない。  『花言葉』を。  この、世界に一輪しか存在しない花に。
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