思い出

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小学6年生の時いつも通る道の、猫がたくさんいるお宅のお庭で同じ小学校に通う生徒がそこの猫と戯れているのを見かけて自分も興味を持ち始めた。 わたしも猫を触れるのかな と翌日の帰り道、友達と一緒にそのお宅に寄ってみることにした。 触ってもいい許可をもらうために家の人に声をかけたけど、猫たちも見知らぬわたしたちに警戒していて近寄ってはきてくれなかった。 何日かそのお宅に通おうと友達と約束をした。 給食で残した苦手な牛乳をもっていったり、パンをわざと残しては持って行ったりしているうちに猫を触れるようになってきて、飼いたいなと思うようになっていた。 ある日の帰り道、いつもの猫の家。庭先には人がたくさんいて、カゴを取り囲むように何人か大人がいた。 どうしたんだろうと行ってみると、子猫が。 小さな譲渡会だった。一人また一人と子猫を連れて家の人に挨拶をしては去っていく。 わたしも飼いたい!そう思ってすぐに家に帰った。帰ってすぐに母に相談をした。母も動物好きなのでちゃんとわたしが世話をしますと約束をすると賛成してくれて、あとは父に相談をしなさいとのことだった。 父は、反対はしなかったものの、いいとも言ってくれないけど、反対そうな顔色だった。 学校の牛乳やパンや、晩御飯の残りがあれば育てることができるもん。と。 家の中ではなくて、外で家を作ってあげればいいんだもん。と。 飼うために強硬手段に走ってしまった。 翌日の学校帰りに猫のお宅へと急いで、家の人にまだ子猫はいますか?と聞いて、あと2匹の子猫が残っているとのことで、親とは話をしていると話すと快く譲ってくれた。 父から了承を得ることができなかったことから、母にも秘密にしようと考えたわたしは、山に上がるあまり人がいかない小屋で飼うことにしようと決めた。 そこに段ボールの家を作って、牛乳やパンを毎日持って帰り与えた。 それからたしか、1か月経つか経たないかくらいだったと思う。もしかすると1,2週間だったかもしれない。 まっすぐ家に帰り、ランドセルから猫へのお土産を取り出して向かうと、段ボールの家の中には猫がいない。 親には秘密の猫だから、大きな声では名前を呼んで探せない。 小屋の付近にはどうやらいなそうだと、自宅付近を探していると、そこで父が仕事をしていた。 なんだか厳しい顔をしている…。 母から急に呼び出され、はーいと返事をしてわたしは猫探しは後にしようと母のいる自宅へ戻った。 すると母は少し怒ったような顔で私に言った。父になにかいうことはない?と。秘密にしていることはない?と。 胸の中には猫のことしか思い浮かばなかった。勝手にもらってきてしまったことを母に正直に話した。 すると父にも正直に話しておいでと言われた。もし返しておいで。と言われたらそうするんだよ とも付け加えられて。叱られる覚悟をしながらとぼとぼと父のもとへ。やっぱり厳しい表情をしている。 泣きそうになりながら、 お父さん…。と呼ぶと、こちらを見ずに父は言った。 と、ぱっと横を見ると、そこに猫…。今出てこないでー!と心の中で懇願した。 父は機嫌が悪そうな言い方で、黙ってることがあるのか?と聞かれて怖くなってわたしは黙り込んでしまった。猫も気になった。 なにか言わないといけないことがあるんじゃないか?と今度はこちらを向いて言う父。 少し間をおいてから、猫をね?飼いたくて。 もらって来ちゃったんだけど、飼ってもいい? と言ったと思う。 すると父は、コーヒー淹れてきて、とわたしに言う。 うん、猫、飼ってもいい?おとうさん。コーヒー淹れてくるね と泣きそうな顔を向けたと思う。 それから、父にばれないように外の壁の方にいる猫を一旦、奥の方において、シーだからね?と口に指を一本縦にして小さな声で言って、急いで自宅へ戻って沸騰したか、まだ沸騰してないお湯を注いでコーヒーを作って、少しこぼしてしまったコーヒーをもって父のもとへ向かった。 猫は、とみると猫は壁の奥の方から出てきていないのか、それともどこか別なところへ移動したのか、いなくなっていた。 父にコーヒーを渡すとき、もう一度聞こうとすると、先に父が口を開いた。 ちゃんと世話するか?毎日だよ?ごはんもトイレの始末もできるのか?一生面倒みれるのか?と、あと母に世話させるようなことしないか?とも聞かれて、全部ちゃんとしますと父に約束をして、仕方ないなという風に父は飼うことを了承した。わたしはとても嬉しくて猫を探しに行った。 すぐに父にみせようとして猫を探してもいなくて、父にそう伝えようと父のもとへ行ってみると、猫が父の膝の上で横になっていた。父は満面な笑みを浮かべて猫を撫でていた。
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