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愛犬
一昨年2018年9月。
わたしの愛犬が亡くなった。
作品にも登場していたミニチュア・ピンシャーの女の子でした。
13歳と6カ月、とても静かに苦しまずに逝ってしまいました。
持病だった甲状腺ホルモンの低下による症状の最後の最後に現れる症状。
それは病院の先生から気管が狭まり息ができずに窒息するだろうと伺っていました。
先生におすすめをされペット用でレンタルもある酸素発生機。すぐに手配をしました。それでもみるみるうちに悪化していく症状。日々増してゆく辛そうな息遣い。もうわたしにはもうどうすることもできませんでした。
いつもと様子が各段とおかしいと思った日の夜。
もともとは食べることが大好きな愛犬。その日は少しも食べてくれなかったので大好きなものを与えて食欲を促します。勇気づけながら時間をかけて食べることを少しづつ促しました。
果物をとても小さくしたものをやっと少しだけ口をつけたのでケージの中の愛犬に付き添って見守っていました。
愛犬のその目はじっとわたしを見つめていました。ケージから出たら呼吸がしにくいというのに出たがって抱っこを要求している様子でした。
本来あまり抱っこは得意じゃなかったのにこの日は特に。やっぱりおかしい。
もしかすると最期の日なのかもしれないと脳裏を横切りました。
よくも悪くも我慢強い性格に育ち、これまでなにか要求をしてくる時は愛犬にとってどうしてもの時だけでした。どうしても出たいんだ。どうしても今抱っこされに来たいんだと判断をしたわたしはケージの中から出ることを許しました。
出ると呼吸が荒く辛そうなのでほんの数分だけ。数秒だったかもしれません。何度か繰り返しましたが中にいないといけないとわかったのか観念をしてケージの中で大人しく横になってくれました。
何時間か経った後、愛犬が酸素の特別なケージの中で動いた様子は一切なく大きい方のおもらしをしていることに気が付きました。自力でトイレへ歩いていくことも出来なくなってました。
拭いてもあまり衛生面などから効果はないと思ったわたしはなるべく体に負担にならないよう優しく抱きあげ且つ急いでそのままお風呂場へ。ぬるま湯で軽く洗い流し急いで拭きあげてケージへ戻ろうと抱き上げたときでした。
愛犬の首がだらんと垂れ下がりました。声をかけても反応が一切ありません。
わたしがケージから出したから。
どうしたらいいかパニっくになりかけながら、それでもこういう場合は…と考え、すぐにケージ前へ寝かせて口で人工呼吸を始めます。
合ってるのかどうかなんてわかりません。犬へのマウストゥマウスなどあり得るかどうかすら知りません。
でも、犬の口って人間とは違いカーブがすごいですよね。前からじゃ横からどんどん空気が逃げる。すぐに愛犬の口の全体を覆うようにわたしの口から空気を送り込みました。酸素のケージにつないであるチューブを口の奥の方まで入れて直接加えさせ、心臓マッサージもしました。何度か続けたら愛犬はうっすら息をし始めたんです。
はじめは徐々に少し辛そうに意識を回復して朦朧とした様子になり次第に目も開き、意識が戻ったのだと実感しました。愛犬は号泣するわたしの顔をみていました。ぐったりしつつもなにかあったの?という風な顔をしています。ケージに愛犬を戻してゆっくり休むよう促しました。
ほっと胸を撫でおろしたのも束の間、愛犬が大人しくケージで過ごしている間考えてました。愛犬がまた同じような状態になったらわたしの行動はどうするべきかを。
もし、また同じように心臓が止まったら。
もし、また人工呼吸をするとしたら。
もし、また息を吹き返したら。
もし、愛犬が死んでしまったら。
でも、何度死んで蘇生をして息を吹き返しても呼吸が治るわけではない。
何度も何度もそれを繰り返し、そのたびに辛く苦しい思いをさせるのは愛犬にとって幸せなわけあるわけがない。
近いうちに必ず訪れてしまう最期の時。もうそれは止めることは出来ないのだから。何度も何度も呼吸が辛く息ができないことを繰り返し息も出来ずに心臓が止まることが苦しくないわけがない。何度も何度も辛い思いをして息を吹き返す。でもそれはわたしのただのエゴなのではないか。
でも、もっと側にいてほしい。でもこれはエゴにすぎない。
葛藤を繰り返してようやくそう考えが至ったわたしは次に愛犬が同じような状態になった時には安らかに逝かせることに決めました。辛い決断でした。
それでも自問自答して正解の答えは一向に出ない。
でも、苦しんでほしくない。
でも、生きてほしい。
でも、これは飼い主のエゴ。
でも、でも。でも。。
助けてあげられない…。
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