喪失

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愛犬を失い、心にぽっかり程度じゃ済まない大穴が開いたようなまだ血が滴る生傷のような感覚で日々をすごした。 毎日毎日。毎日毎日、愛犬のことばかりを考えて、あの時ああしていてよかったのかを考えて会いたさが募り、もう二度と会えないことが身に染みいり実生活もままならず、仕事を休んだりした。 一か月ほど経った頃、これではだめだ。となにか気持ちを切り替えるなにか一生懸命になれることを探さなければだめになる。と、そう思いはじめた。 そうだ。ペットショップへいってみよう。 亡くなってまだ間もないのにそう思ってしまった。 愛犬に会いたくて会いたくて、そこにいるわけがないのに。 癒されたかったのかもしれない。 実際に行ってみると癒されるどころか正直、辛かった。 ペットショップのまだ小さな子犬たちをみても、愛犬と同じ犬種をみると愛犬が子犬だった頃を思い出し、心をぎゅっと、鷲掴みにされてるみたい。 辛くて泣きたくなる。 それでも家でだまってもういない愛犬のことを考えてはなにもしないよりはましだった。 心のリハビリのように週に何度もペットショップを訪れているうちに、幼気な子犬たちに癒されて少しづつ心が回復している実感がわずかにあった。 そうして、二か月ほど経った頃には、新たに家族として子犬を迎えることを心に決めていた。 ペットロスはペットでしか治せない。よく聞くけど、ほんとうだなとそう思った。
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