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「ナイスバッティング」
拍手をしながら笑顔で彼が声をかけてくる。さっきのが最後の一球だったらしく、もう球は出てこなかった。
それにしてもまだバットを握りしめていた手がジンジンしている。でも爽快感は凄い。
ジンジンする手を見ながら私の顔には笑顔が溢れた。打てた喜びを声をかけてくれた彼に向ける。
「ありがとう」
私が笑顔を向けると彼もニコッと笑顔を返し、そのまま近くにある自動販売機に向かって歩き始めた。
「ちょっと待って」
私は慌てて呼び止めて、彼の元へ駆け寄る。
「ジュース、私に奢らせて」
「えっ…そんな申し訳ないです。逆に僕が奢りますよ」
「いいの、凄く助かったから。コーチ料支払うわ」
私は必死にお願いする。だって本当に助かったし。
ちゃんとバットに当たったのは一回きりだけど、その一回で一瞬でも失恋の傷を忘れて爽快感を味わえたんだから…
「じゃあ…お願いします」
私のキラキラ目をしたお願いオーラが通じたのか、一緒に自動販売機へ向かう。
「何かすみません。ジュース頂きます」
彼はミニサイズのペットボトルに入ったスポーツドリンクを選び、蓋を開けて勢いよく飲んだ。
サラッとした髪に爽やかな雰囲気の彼のスポドリを飲む姿がちょっと妖艶っぽく見える。思わず隣でボーッと彼を見つめてしまった。
この人、絶対モテるだろうな。イケメンだし性格良さそうだし。
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