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「何か、上手く話を聞いてあげられなくてすみません。もっと気が利くセリフを言えたら良かったんですけど…」
「話を聞いてもらっただけでだいぶ気持ちが楽になったよ、ありがとう。こちらこそ初対面なのに変な話聞かせちゃってごめんなさい。あっ電車どれ乗る?一緒の電車かな?」
「いえ、僕は電車に乗らないのでここで失礼します」
もしかして私を駅まで送ってくれた?
「そっかぁ。じゃあここでお別れだね。今日は本当にありがとう」
「あまり気を落とさないで下さい。きっとまた一花さんにとって良い出逢いはありますよ。では気をつけて帰って下さいね」
祐希さんは最後に私の頭にポンと優しく手を乗せる。今日、祐希さんに会えてよかったな。そう思う瞬間だった。
私の頭から手を離すと祐希さんはニコッと笑顔を見せて、手を振ってクルッと反対を向き、駅から離れて行った。
「祐希さん、良い人だったな」
祐希さんの姿が見えなくなるとそっと呟いた。連絡先も聞いてないし、もう会う事もないだろうなと思いながら、私はホームにでて電車に乗り家へ帰った。
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