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トレーニングをしても、美橙の魔力はないに等しい。愕然とする祖母に、彼女の娘である美橙の母が声を掛けた。
「まぁ、3ミリだけど動いたんだし、良いじゃない? まだ入学もしてないんだから……。私も、入学してから魔力がついたでしょ?」
「そうなの!?」
世界一の魔女である祖母の娘が、入学前自分と同じだったのかと驚く美橙に、母は微笑んで頷いた。
「えぇ、そうよ。パパは、生まれつき魔力が強くて黒いブレザーを着ていたけど、私も最初は白のブレザーだったの。おばあちゃんのスパルタを受けて、最終的には紫色のブレザーになったけどね」
「す、スパルタ……」
顔色を変える美橙に向け、にやりと祖母が意味深な笑みを向けた。
「今日、卒業式だったんだろ?」
「……そうだけど……?」
「って事は、今日から学園の寮に入っても問題はないね?」
「え゛?」
夜月学園は全寮制である。それは知っていたが……。
「私の春休みは!?」
「白のブレザーのお前に、そんな猶予はない。行くよ!」
美橙の手を掴んだ祖母は、いつの間にか纏められていた荷物を担いだ。
「頑張ってねー」
飄々と笑顔で手を振って見送る母。祖母にぐいぐいと手を引かれる美橙は、それを恨めしく睨んだ。
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