理事長の孫

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「……黒じゃないんだ……」  ワンピースの色が黒ではなくグレーであった事に対し、美橙はポツリと指摘すれば、祖母は深いため息をついた。 「私だって本当は、黒のブレザーを持ってきたかったよ。まさか、白なんて……」 「へ? ブレザー?」  こてんと首を傾げる美橙。祖母は認識の違いに気付いた。 「美橙……、あんたワンピースの事を言ったのかい?」 「そう。だって魔女といえば黒い服でしょ?」  魔女イコール黒い服と結びつけた美橙に、祖母は更に深いため息をつき、あり得ないと首を振った。 「世界一の魔女である私が近くにいるのに、気付かないのかい? しゃれた服を着てるだろ。魔女が地味な装いをしているだなんて、勝手な妄想だよ」  確かに、世界一の魔力を持つ魔女として、そっちの世界の人々の間では有名な祖母は、いつも派手な服装だ。 「じゃあ何で、おばあちゃんは黒を持ってきたかったって……?」 「私の学園ではね、魔力の強さによってブレザーの色が分かれているんだよ」  私の学園。美橙の進学先の学園は、祖母が理事長をつとめる学園である。ちなみに学長は祖父なのだが、公私ともに尻にしかれている彼に権限はない。  更に、お気付きであろうが、その学園は普通ではない。魔力を持つ家系の子どもが通う学校なのである。
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