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「で? 進学先の校名をど忘れしただなんて、まだ隠し通すわけ?」
卒業証書を手にした花梨が、猫目の可愛い顔をずずっと近づけて美橙に問う。美橙は卒業式の今日まで、進学先の学校名をど忘れしたと突き通し、友人たちに明かしていなかったのだ。
「てかさぁ、何で頑なに隠すわけ? 進学先を言いたくないなら言わなくても良いけど、隠す理由は教えてよ。あんた、最近変よ? 何か悩みでもあるの?」
花梨は、最近の美橙の様子がおかしい事に気付いていた。祖母から課題を与えられた美橙。友人からの遊びの誘いを断る事が多くなっていたのだ。
「実はさぁ……」
美橙は花梨に全てを打ち明けた。祖母が学園の理事長を務めており、そこへ入学する事。その学園は普通ではなく、魔力を持つ家庭の子どもが通う事。更に、祖母から課題を押し付けられて遊びに行かれなかった事も……。
「こんな御伽話、信じてもらえないかもだけど……」
俯いて言葉を落とす美橙。世界中の大多数に属する魔力を持たない家系の者たちにとって、魔法の存在など妄想でしかあり得ないのが常識だ。この様な話を信じる者などいるであろうか……。
「ってか、私知ってるんだけど! 夜月魔術学園って!」
「は?」
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