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第十話 初心者冒険者①
「……で、リリス! クエストっていったいなにを受けるつもりなんだ?」
「はぁー……。ホントに何も知らないのね? 良い? 先ずは、冒険者になったらギルドが貼り出したクエスト票から好きなクエストを受諾できるの!
もちろん最初はEランクからよ! そして、ギルドが決めた規定をクリアーすれば、ランクが上がっていく仕組みなの!
ランクが上がれば、危険は伴うけどそれだけ高額な報酬が得られるわ!
だから、最初はスライムとかアーモンドリザードとかを討伐して日銭を稼ぐのが定番ね!
まぁ、いずれはランクが上がってドラゴンとかを討伐出来たら万々歳よ!」
なるほどな。
いわゆるこの世界は、ゲームとかでよくある定番のファンタジー世界らしい。
そりゃあ、レイナさん見たいに獣耳もふもふの住人もいるし、ギルドカードのステータス表にも魔法って文字があったし。
オレの職業が『三流ホスト』じゃなかったら、夢の異世界ライフの始まりだったんだけどな。
しかし、それよりもだ……。
「リリス……もう一つ聞いて良いか?」
「何かしら?」
そして、一瞬の沈黙が流れる。
「なんで、お前は昼間からっ! から揚げをツマミに泡の出る飲み物なんかを飲んでんだよおおおおおおぉぉぉぉーっ!!」
オレの声が、食堂の中でこだました。
そう、あろうことかこのひよっこ勇者はギルドに隣接する食堂で酒……いや、泡の出る飲み物を昼間から優雅に飲んでいたのだ。
「べ、べつに! 良いじゃない! 何事も焦っても良い結果は得られないのよ? それに、クエスト中にお腹が空きすぎて倒れでもしたら、それこそ危ないじゃない! 身体は一つしかないし、仮に死んでしまったとして蘇生魔法なんて使えるのは国に数人いるかどうかよ? ハルトは、デビルトマトが死んだ時見たいにグチャってなりたいわけ?」
そう言いながら、リリスは皿に付け合わせに盛られていたトマトをフォークで潰して見せた。
「……百歩譲ってだ。仮にリリスが言う通りだとしても、武器や装備の新調や街の外のモンスターの情報を仕入れたり、やる事はいくらでもあるだろっ!
なんで、お前は一番最初にやる事が昼間から泡の出る飲み物を飲む事なんだよ! お前、それでも自称勇者かよっ!」
「ちょっと待って! 自称じゃないから! 勇者だからっ! 可憐で可愛い、勇者様だからっ!」
「ひよっこ勇者だけどな」
「なっ! ハルトだって、全ステータスEランクで職業だってわけのわかんないヤツだしー! 今まで、どうやって生きて来たか知らないけど、良く恥ずかしくも無く人前に出られるわねぇー! わたしなら、屈辱過ぎて死にたくなるレベルよ!」
「なにをーっ!」
「なによっ!」
オレとリリスはテーブルを挟んで、ガシッと手を組み睨み合う。
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