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第十一話 初心者冒険者②
「はぁー……。やめだ、やめ! こんな事しても何もならねー」
「そ、そうねー……。確かに何も得られないわねー」
そして、再び沈黙が流れる。
「けどな……リリス……あれ、どうするんだよ、あれ……」
「……あれって?」
「……これだよ」
そう言ってオレは、ごそごそっとポケットから一枚の紙切れを取り出した。
『 【借用証明書】
冒険者リリス・ジャンヌ・セレベール及びに、冒
険者イチジョウ・ハルトに金七万ギルを貸し付け
る。返済期間は、七日間とし期日までに返済する
べし。
尚、期日までに返済出来ない場合はギルドマスタ
ーレイナ・ラミスティーの名を持って身柄を拘束
し、強制執行を持ってあらゆる手段を持ち入り返
済させる事が出来るモノとする。
』
「な、七万ギル位ならちょちょっとクエスト行ったらどうにかなるわよ! だって、このパーティにはゆ、勇者のわたしがいるんだから! えっとー……確か……あのクエストが一万ギルでー……」
そう言って、リリスは残念な頭の中でクエスト勘定を始めた。
ちなみに、ギルド登録とかは勇者割引で無料になったのだが、恥ずかしい話しオレ達はこの世界で言う所のギルを所持していない。
そこで、ギルドに頼み込んで自称勇者の信用?とやらで特別にお金を借りたのだ。
費用としては、最低限の生活費とクエストに出る為の武器を買う位の金額だ。
もちろん、間違っても今みたいに贅沢をする為では無い。
大切な事なのでもう一度言うが、「贅沢」をする為のお金ではないのだ。
「リリス……もし、返済出来なかった時の事を考えた事あるか?」
「な、なによーっ! わたしがいるから大丈夫って言ってるでしょ! それに、もし返済出来なかったら、どうせ強制的になんかやらされるんだからそれで頑張って返せば良いじゃない! しかも、ホントに最悪の場合は荷物をまとめて高飛びよっ! この、リリス様を捕まえて見れるもんなら捕まえて見せなさいよって感じよねー!」
おー勇者よ借金を踏み倒すとはなんと情けない。オレがRPGとかに出てくる王様ならきっとこう言ってるだろうな。
しかも、勇者がギルドに借金するだけでもヤバイのに、その世界を救うかもしれない勇者が借金を踏み倒す事を推奨するとはこの世界はもう駄目かもしれない。
「ちなみにだが、リリス。高飛びしたとして捕まったらどうなるかわかるか?」
「強制労働されられるだけじゃないの?」
「甘いな! あのレイナさんがそれだけで許してくれるわけないだろ」
「じ、じゃぁ……。どうなるって言うのよー!」
「……これだ」
そう言って、オレは自分の首の前で親指を逆さに立て、横にスライドした。
「……な……なにそれ……」
「……チョンパだ」
バンッ!
リリスが、思いっきりテーブルを叩いた。
「さ、さぁーハルト! え、エネルギーは充電したわ! さっそく、クエストを受諾しに行きましょうかー!」
「まぁー待て! 先に武器屋に行くぞ! 武器無しでどうやって闘うつもりだ?」
「そ、そうねー! そうだったわー! そうと決まれば武器を用意したら直ぐにクエストに行くわよ! い、急ぐわよ!」
さっきまでの余裕はどこに行ったんだよ。
こうしてオレとリリスは、武器を新調してクエストに行く事となった……。
【只今の借金】金七万ギル
【運命の日まで】残り七日
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