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第十ニ話 はじめてのクエスト①
かつて、神とも言われたホスト言った。
オレかオレ以外かと。
そして、いつか世界を救うかもしれない主人公は言った。
食べるか、食べられるかと。
「あああああああああぁぁぁーっ! なんで、ハルトは食べられながら格好付けてんのよ! あほ、あほなの!? ねぇー!」
「……リリスいいか。世の中には二種類の人間しかいない。食べるか、食べられるかだ。大事な事だからもう一度言った」
そう、オレは世界の厳しい食物連鎖に負け、絶賛アーモンドリザードに捕食されている最中だった。
いや、分かってたよ? 全ステータスがEランクのオレがクエストに行ったらどうなるか位。
けどさー言うじゃん? 男には例え負けると分かっていても、闘わなければいけない時があるって。
今じゃなかったなー、うん。
「ちょ、ちょっと待ってなさいよ! 今、助けて上げるから! スキル発動! リリスソードっ!」
そして、リリスはアーモンドリザードを腹から横に真二つに両断した。
「おーっ、すげー! あのダメ勇者がなんか本物の勇者に見えたぞ!」
「ダメ勇者じゃないからっ! ひよっこ勇者だから! それにわたしは最初から本物の勇者ですから! てか、なんでトカゲに食べられてるのにそんなに冷静なわけ?」
今日は自分で、ひよっこ勇者って認めるんだな。
「なんでって、言われてもなー……。スキル使ったし」
「スキル使えるなら食べられる前に、自分でなんとかできたでしょ!? あーっ、もしかしてわたしがちょーっと贅沢した事を根に持ってるわけー? けど、それならわたしに助けられる必要は無いし……。てか、そうだとしてもあの落ち着き方は以上よ!」
「そりゃあーそうだろ。オレのホストスキル『アイアン・メンタル』は、三分間何事にも動じない不屈の精神を得られるモノだからな。あーちなみに、このスキルは一日に一回しか使えないから、今日はもう使えないぞー」
オレがそう言うと辺りに少しばかりの静寂が訪れた。
その中を生ぬるい風だけが吹き抜ける。
「……他のスキルは?」
「……ない」
そして、再び静寂が辺りを支配する。
「ぷっ……ぎゃはははははっ! う、うそ……でしょ!ひぃー、全ステータスが……い、Eランクで!し、しかもスキルまで!ふーふ、ふあぁははははははっ! ご、ごみとかー! あ、あり得ないんですけど! あー、お腹痛い!」
「おい、リリス。死ぬ前の遺言はそれだけか?」
そう言ってオレは今では形をだけのショートソードに手をかける。
リリスが、ロングソードを買ったせいで店の片隅で半額になっていたこれしか買えなかったのだ。
「ふーふー。ふひぃ……。ご、ごめんね。つい出来心で……。け、けど安心していいわよ? べ、別にハルトが使えないポンコツだからって、見捨てたりしないから。だって、わたし達仲間じゃない!」
「おい! 今、良いことを言いながらサラッと、悪口言わなかったか?」
「き、気のせいよ……ぷっ」
こいつ帰ったら、ギルドのレイナさんに借金を飛ぼうとした事を密告してやろうか?
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