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第十四話 はじめてのクエスト③
【始まりの街】
クエストを終えた帰り道。
「ぐすっ……あああぁ……ぐしゅ……」
「おい、もう泣くなって……死なずに助かっただけでも儲けもんだろ? ほら、ハンカチ貸してやるから……とりあえずこれで涙拭けよ?」
「……あ……ありがと……。じゅ、じゅぴー」
「お、おい! 涙を拭けとは言ったけど、鼻をかめとは言ってないぞ!」
「ぐすっ……だってー……あのトカゲ……ぐしゅ……息が……臭かったもん」
オレとリリスは、夕暮れの中。
クエストを終えて、トボトボとギルドに向かって歩いていた。
前回の話しをすると長くなるので、結果だけ言うと見ての通りリリスは助かった。
オレの二つ目のスキルを使った攻撃は、会心が上昇して確かに大きなトカゲやろうに刃が入ったが。
安物のショートソード故に、途中でそれは見事なまでにポッキリと刃が折れて、痛みに怒り狂ったトカゲやろうはリリスを振り払い、今度は標的をオレに変えた。
そして、オレが泣き叫びながら逃げ回っていると、クエスト帰りの冒険者パーティーがたまたま通りかかり、助けてくれたと言うわけだ。
ちなみにそれでも討伐まではいかず、大きなトカゲやろうは深い傷を被って逃げって行った。
「よーし! じゃあ、今日は初クエスト成功を祝して酒場でお祝いだな! リリスの大好きな、アーモンドリザードのから揚げもいっぱい食っていいぞー!」
「ぐしゅ……じゅ、じゅぴー! そ、そうと決まったら! 敵討ちよ! この、可憐で可愛い! 超絶美少女で勇者のリリス様を、あんな目に合わせたんだから! これでもかーと言う位、食べて上げるんだからっ! さぁ、ハルト! 早く行きましょ! 急がないと無くなっちゃうわよ!」
元気が出たのは良かったけど、食べるのは程々になーと思いながら俺達はギルドに向かった。
✢
「「クエスト成功を祝してっ! かんぱーいっ!」」
オレとリリスは、手に泡の出る飲み物を持って酒場で食事をしていた。
もちろん、テーブルには約束のアーモンドリザードのから揚げが並べられてある。
「しかし、一時期はどうなるかと思ったけどアーモンドリザード、一体討伐でニ万ギルになるとはなー! しかも、ギルドの素材買い取りで追加の一万ギルとは! まぁーなんにせよ、良かった!」
「だから、言ったじゃなーい! この可憐で超絶可愛い、美少女勇者のリリス様がいたら大丈夫って!」
「いや……トガゲ野郎に捕まって、たしゅけぇてーって泣きわめいてたのはどこのどいつだよ! たまたま、通りすがりの冒険者パーティが助けてくれたから、良かったものを! 一歩間違えたら今頃、仏さんになってたからな?」
「そ、そ、そんな事言ったら! ハルトだって、Eランクのアーモンドトカゲに食べられてたじゃない? 初心者冒険者だとしても、アレはどうかと思うわよ? それに比べてわたしは、相手がCランクモンスターだったわけだし! し、仕方ないわよねー!」
仕方ないわけあるかーと思ったが言わない。
なぜなら、この話を続けたらめんどくさくなる事が分かっているからだ。
てか、このアーモンドリザードのから揚げ美味いなー。
ちょっと独特な臭みはあるが、ジューシーで旨味が口の中に広がって行く。
確かにこれは、泡の出る飲み物のツマミには良く合うのが分かるぞ。
「そういや、リリスは魔法とかは使えないのか?」
このまま、あの話しを続けても意味がないので、ふっとした疑問をなげかけて見た。
すると、一瞬の沈黙が流れ。
「……魔法は、勇者が使うモノじゃないわ」
と、リリスは言った。
「要するに、魔法は苦手と言う事で合ってるか?」
「に、苦手じゃないわよっ! ただ……ちょーと、わたしの戦闘スタイルと合わないって言うか……。魔法が言う事聞かないって言うか……。ねぇー?」
「ねぇー? って言われてもな……。と、なると後は……。後衛担当の魔法職と、ヒーラーでも居た方が良さそうだな」
オレ自身もパーティの良し悪しは分からないが、オレとリリスが前衛なら後は後衛のサポート系が必要なはずだ。
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