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第五話 はじめての仲間①
ガツガツ、もぐもぐ、ガツガツ
「おかわりっ!!」
そう言って、少女は凄まじい勢いでご飯を食べる。
いや、もうそれで五配目だぞ?
「まだ、おかわりはあるからねー! たーんと食べな!」
そう言って、セシルさんは笑顔で台所に行く。
申しわけねぇ。
簡単に話すと、街の入り口で倒れていたオレと少女をパン屋のセシルさんのご主人が運んでくれたらしく、なんとか助かったのだ。
「てか、なんでお前はあんな事になってたんだよ?」
「お前じゃないから! わたしにはお父様とお母様に貰ったリリスって言う大切な名前があるの!
てか、あなたこそ名前を聞いて無かったわね? 特別に、助けてくれたお礼に名乗ってもいいわよ!」
「いや、大丈夫だ」
「なっ……。せめてね、ほら……。名前って大切じゃない? こうやって出会えたのも何かの縁だし……。そ、そうよ! それこそ、創造神イチノセ様の導きがあっての事だからね! と、特別に名乗っても……」
「だが、断わる!」
「けど……。ほら、名前を知らないとこれから先不便じゃない? やっぱり……仲間になるのなら、コミュニケーションも大事っていうか……ねぇ?」
「いや、仲間になった覚えはないぞ?」
これはマジなヤツだ。
「ぐす、なんでぇよぉ……。 名乗りなさいよぉ……。 わたしが聞いて上げてるじゃない……。ねぇ、ほら! 早く! 遠慮しないで!仲間なんだから! ねぇ!」
だめだ。
やっぱりとんでもなく面倒くさいヤツに捕まってしまったらしい。
「こら! 男の子が女の子は泣かせるもんじゃないよ?」
そう言って、皿にスープを入れて戻ってきたセシルさんは怒った。
「……ハルトだ」
セシルさんに言われてオレは仕方なく名乗る。
「そう、ハルトって言うのね! いい名前じゃない! それなら、最初から恥ずかしがらず言えばいいのにー! もうー、ハルトは照屋さんなんだからー!」
こいつ、ぶっ叩いていいか?
「てか、おま……リリスはなんでこんな事になってんだ?」
「……こんな事って?」
まったく、なんの事か分からないと言った表情でリリスは聞いてくる。
ちなみに、おつかいの帰りにリリスに捕まったオレは、一向に離さないリリスを引きずりながらここまで戻って来たのだ。
「じゃあリリスは、なんで倒れそうになるまで腹が減ってたんだ?」
質問の仕方を、変えて見ることにした。
「そうねー……話せば長くなるんだけど、これから命をかけて戦う仲間に隠し事をするのもね……。
も、もちろん! わたしの、スリーサイズとかそう言う乙女の秘密はダメよ! けど、最近胸が大きくなってきたわねぇーって、お母様が言ってたし……。
は、ハルトがどうしても知りたいって言うなら! ほ、ほら! ハルトもやっぱり思春期の男の子でしょ? そう言う女の子の身体に興味があるのはわかるけど……。
わたしとハルトは出会って間も無いわけじゃない? だけど、やっぱり物事には順序ってモノがあると思うのだけど……。
ハ、ハルトはどう思う?」
「どう、思うって言われてもな……」
正直、知るか! としか思わない。
色々とツッコミ所が満載なのは置いとくしても。
オレの美少女イベントが来たと言う淡い期待を、返して欲しい位だ。
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