第六話 はじめての仲間②

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第六話 はじめての仲間②

「で、リリスはホントに勇者なのか?」 「もうー! ハルトったら、何回も言ってるでしょうが! わたしは、勇者ったら勇者なの! それも今までのむさ苦しい勇者とは違うの! 可憐で、美少女で! 誰もが羨む位強い勇者様なんだから!」 そう言って、リリスはどうだと言わんばかりに胸を反らせて見せた。 もう、自分で美少女とか言う辺りでお察しなのだが。 リリスの三時間位かかった長い話しをかいつまんで話すとだ。 ある日、創造神イチノセ様からの魔王討伐の天命を受けたリリスは勇者になった。 元々は勇者の家系であり、今までに何人もの勇者を排出して来たいわゆる貴族様だ。 それで、旅立ったのが十日前で道中道に迷いながら彷徨って、この街に流れ着いたらしい。 まぁ、簡単に言うとこんな所だ。 それで、セシルさんの所の小麦粉とかの仕入れのお手伝いを終わらせたオレ達は、冒険者登録をする為に街の中央にある『冒険者ギルド』に向かっていた。 「けど、リリスが自称勇者なのは分かったが剣はどうしたんだ? 勇者の家系なら鎧はともかくとしても、剣位はありそうなんだが……」 リリスの格好は軽装だ。 貴族の階級って事は、いわゆる騎士様である。 それこそ、高そうな立派な鎧に剣をさしているイメージであるが、リリスは正反対だ。 革の鎧に安そうなブーツ。 パッと見は、駆け出し冒険者の様にしか見えない。 しかも、剣も持ってる様には見えない。 「自称じゃ無いから! 勇者だからっ!! けど……剣は……ったわ……」 「うん? すまん! もう一度言ってくれ。剣はどうしたって?」 「だからー! 剣はー! ……ったわ……」 「え? 良く聞こえない」 「あーっ、もうー! そうよ! 先祖代々伝わる勇者の剣は売ったのよ! ねぇー悪いっ!? そりゃあ、誰っだって何日もご飯を食べてない状態で! この街に来る前に、たまたま寄った街の露店に美味しそうなお肉があったらそうするわよね? お金だって途中で落としちゃうし、無一文だったら大切な鎧とか剣でも質屋に持って行って売るわよね!? だって身体が資本でしょ!? わたしが死んだら魔王討伐とか言う話しじゃないじゃない! それに、一回家に戻ろうかとも思ったけど怒られるのはイヤだったし……それに……」 「……それに?」 「それに……帰り道が分からなかったから……」 そう言ってリリスはズドーンと落ち込んだ。 もう、なんというか目も当てられない。 「け、けど……勇者の剣って言う位だからそこそこの値段になったんだよな?」 頑張って話題を変えようと試みる。 「……三万ギル」 「それって……高いのか?」 「三食ご飯付きの宿に泊まったら、三日で無くなる位の金額ね……」 「…………」 「…………」 二人で無言のまま、トボトボと歩く。 「ねぇー……ハルト……」 「……なんだ?」 「わたしって……もしかして……大変な事をしちゃったのかな?」 「…………」 「ねぇー……ハルト……。どうして……黙ってるの?」 「……いや……あれだ! うん、そう……」  頑張って励ましの言葉を考えるが出てこない。 「ねぇー……ハルト……。どうして……さっきから目を見て話してくれないの?」 そう言って、リリスは今度はオレの顔を覗き込んできた。 オレは……そっと、リリスから……目を反らす。 そしてーー。 「ああああああああああぁぁーっ!! ねぇー、どぉうしよー! ねぇー! ハルトおおぉぉーっ! 仲間なんだから、たじゅけぇてよぉーっ! 見捨てないでぇー! うわあああぁぁーんっ!」 「お、おいやめろ! 涙と鼻水をオレの服に撒き散らすなっ! って、かむなっ! オレの服でちーって鼻をかむなー! 人が見てるから! ねぇ、やめて! もう、ホントにやめて! 分かった、分かったから!」 なんとかリリスを引き離す事に成功したオレは考えた。 なんなら、作者も考えた。 もう、勇者が剣を売った時点でこの話し終わりじゃね? と……。  『「熱盛!」じゃなくて、「冷盛!」売れないホストさんは、異世界で無双出来なかったらしいですよ! 完』でいいんじゃね? と……。 てか、だから作者って誰の事だよ? そんな中、リリスは顔面を鼻水と涙でぐちゃぐちゃにしていた。 「ねぇ……ぐす……。ハルト……。いい案、浮かんだ? ぐす……」 「そうだな……。リリスは剣を質屋に売ったんだよな? そ、それなら……金を貯めて買い戻したらいいんじゃないのか?」 そう言うとリリスはハッとした顔をして、顔にどんどん生気が戻って行った。 「そうよ! そうだわ! お金を貯めて剣を買い戻せばいいじゃない! ハルトのくせにやるわね! さぁ、そうと決まれば早速『冒険者ギルド』に乗り込むわよ!!」 ハルトのくせには余計だ! と言おうと思ったがやめておいた。 なぜなら、面倒くさい事になりそうだったし、リリスは一人でウキウキな気分でもう歩いて行ってるからだ。
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