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第九話 冒険者ギルドへようこそ③
「こ、これは……」
そう言って声を出したのは、受け付け嬢のソフィーさんだった。
「で……どうだ? 勇者だったのか?」
「いえ……その……これは……」
そう言ってソフィーさんは、ギルドカードをこちらに見せてきた。
『【冒険者名】リリス・ジャンヌ・セレベール
【年齢】15歳
【職業】ひよっこ勇者
【スキル】勇者への道 リリスソード 腹減り
【ステータス】剣B 体術C 魔法D …… 』
「ひよっこ勇者……だと」
オレは、予想の斜め上の結果に困惑する。
すると、その横でレイナさんはーー。
「ぷっ……はははははっ! ひよっこ勇者とは、こりゃたまげたな! 勇者じゃなくてひよっこ勇者とは、こりゃー、今年一面白い! ひぃ、腹がよじれる」
「な、ななな、なに笑ってんのよぉ! ひ、ひよっこ勇者でも、勇者には変わりないじゃない! わたしは、いずれ悪しき魔王を討伐する勇者様なんだからあぁぁぁぁーっ!!」
「ひ、ひひひぃー! これは、これは勇者様失礼した! ご無礼をー……。あーっ、ダメだ。腹が痛い! し、死ぬーっ! は、はははっ!おい、ソフィー! つ、次はそこのボウズを鑑定してやれ! ふひぃー! そいつも、この……。ゆ、勇者様の御一行なんだろ? あぁー死んじまうぞ。ふーふー」
「は、はい! では、こちらにどうぞー」
ソフィーさんにそう言われて今度は、促されるままにオレが水晶の上に手を乗せる。
きたぞ! ついに来た!これから本当の冒険の始まりだ。
この最初のイベントフラグこそ、ゲームとかで一番大切なシーンだ。
ここでオレの隠された潜在能力とかが、披露されて直々に王様からお呼び出しがかかったりするわけで。
職業はなんだ? ひよっこでも勇者がいる以上、同じモノが出る事はないだろう。
パラディンか? いや大賢者でもいい! ここは剣と魔法のファンタジー世界。
どうせなら、魔法職で最強を目指すのも悪くない。
そんな事を考えてると、眩く光っていた水晶が更に強く光だした。
「な、なに!? どうしたの!?」
「なんだ? この凄まじい光は」
「こ、故障でしょうか?」
そして、その光は眩しすぎて目を開けていられない程に光り輝く。
「はじまる! はじまるぞー! オレの……夢の! 異世界生活がああぁぁぁぁーっ!!」
そして、オレの叫びは光と共にかき消されーー。
ーー。
ソフィーさんが、ギルドカードを手に取りーー。
「こ、これは!!」
あぁ……その顔は、カードを見なくても分かる。
やはりオレは、引き当ててしまった様だ。
職業ガチャで、SSRとやらを!!
「ソフィー! どうしたんだ!? 見せてみろ!なっ! こ、これは……」
「ま、まってー! わたしも見たい! え、うそ……なにこれ……」
あー、わかるわかる。
やっぱりみんな、そんな感じになるよな。
これぞ、ファンタジー世界の王道ってヤツだよな。
さて……じゃあオレもそろそろ、ギルドカードを見るとしますかね。
『【冒険者名】イチジョウ・ハルト
【年齢】16歳
【職業】三流ホスト
【スキル】アイアン・ハート
【ステータス】剣E 体術E 魔法E …… 』
「……さ、三流……ホストだと……」
そして、一瞬辺りは静まり返り。
「ぷっ、くすくす……職業はともかくとして。全ステータスがEだなんて! あはははっ! は、ハルト今までどうやって生きてたわけー? あー、やっぱりダメ! 笑いを堪えきれないっ!ひっひひぃー! お腹がー!」
「お、お前らなー! ホントにどこまで、わ、わたしを笑わせれば……は、はははははっ! お、お前、このステータスは……や、やばいぞ! そ、そこらの赤子の方が。ふひぃひひ、た、高いんじゃないのか?」
「こ、これは十年に一度……いえ、もしかしたら100年に一度の出来事かもしれませんね……。こほん、こほん」
ソフィーさんですら、笑いを我慢しているのがわかる。
終わった……。
オレの輝かしき冒険者ライフが開始早々、幕を閉じた。
しかも、職業三流ホストってなんだよ。
この世界は、前世の職業まで受け継ぐのかよ。
こうしてオレの冒険者人生は始まった。
職業三流ホストして、この異世界を生きて行く。
そう……これはそんな売れない『残念なホスト』と『残念な勇者』と、この先で仲間になる『残念な仲間達』による、『残念』なお話しなのである。
『熱盛!』売れないホストさんは、異世界で無双するらしいですよ!
つづく
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