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 あれからも色んなことがあった。  人というのは面白いもので、もう二度と会うことのない一期一会の人間と出会った時こそその本性があらわになる。いい人間も、悪い人間もいた。歓迎されたことも襲われたことも騙されたこともたくさんある。  そんな世界を何も知らなかった少女の頃の自分が経験したことなど、今から思えばほんの些細な出来事に過ぎないのに。 「…今日お前のあの話を聞いていると、まるで遠い世界の他人の話でも聞いているような気がした」 「ああ。誰かの物語はそうやって誰のものでもない一つのおとぎ話になっていくんだ」  クスッと軽く笑ってアイフェがベッドの上で愛剣の手入れをしながら訊いた。 「だからってよく話す気になったな。初めてだろ? あの話を語ったのは」 「…………ああ。供養ってやつかな。悪くない気分だったよ。お話の中の少年は今日ついに神話になったのだ」  親に自慢する子供のような顔でニタニタと笑っている青年に彼女は言った。 「何が神話だ。自分で言ってて恥ずかしくないのか?」 「いいじゃないか。それに……」 「ん?」  意味深な顔で青年は笑った。 「あの頃の君によく似た声がしたんだ。あの席で人々の顔を見渡した時に」 「…………」  だからかなぁ~、あの話をしようなんて思ったのは。と、顔をうずめた枕の下からくぐもって何を言っているのかさえよく聞き取れないセリフをぼそぼそと呟く青年に、アイフェが訊く。 「ところで、問題が起きるパターンの最後の一割は何だ? さっきのお前の説明、足りてなかったみたいだが」  ああ。と、笑って青年は枕の下から告げた。 「…最後の一割はね」  弟子入り志願者が現れるんだ。  一人の少女が控えめに客室をノックする音が、返答のように部屋に響いた。 End
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