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 訓練場に飛び込んできた少年が突然目の前に現れた刀身に驚いて軽く叫び声を上げる。 「誰だ、ここは民間人は立ち入り禁止だぞ」  固い声で騎士に言われて、少年が慌てて両手を上げた。 「待った…ッ! えっと……その、ここの王様に頼まれて…」 「つまみ出せ」  皆まで言わせずアイフェの硬い声が飛ぶ。しかし、少年は意外としぶとかった。 「もし俺が賭けに勝ったら…ッ! そうしたら、あの人の話を聞いてくれませんか?」 ◇  感心したような声で騎士が呟いた。 「すげぇなお前。うちの姫さんって結構頭も良いんだぜ? 討論させたら最近じゃ大臣だって勝てねぇってのに」  城の中では語り部を歓迎する宴が開かれている。その賑やかな声が遠くからかすかに聞こえてくる中、ランプの明かりを頼りに戸締りを確認して回る騎士にくっついて、先程の少年が後ろからついて回っていた。 「…まぁ、俺も伊達に語り部にくっついて旅をしてるわけじゃないんで。謎かけみたいな話のネタならいくらでもあるんですよ。騙しちゃったみたいで、姫には悪い事をしましたが」 「いやいや、いいっていいって。たまにはあのくらいしないと……」 「しないと、なんだ?」 「うぁぁああああッ!!」  突然現れたアイフェに騎士が驚いて仰け反る。その横を通ってつかつかと少年に詰め寄ってアイフェが不機嫌そうにつぶやいた。 「約束は守った。ちゃんと寝ずに最後まで話を聞いてやったんだ。今度はお前が私に付き合え」 ◇ 「…あなたは今、騎士たちと馬で競争しています。二位の騎士を抜きました。あなたは今、何位でしょう?」
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