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「うん゛んぁ、、ァ…、ハァ、き、気持ちいぃぃッ!!」
と野太い馬の獣人の声が響き部屋に独特な匂いがしている。
しかしこの声は碧透の世話している獣人のものとは似ても似つかないし、あの低くて腰がくだけるようなイイ声がそこらにあってたまるものか。
別に変なことをしていたわけでもない!
碧透はこの馬獣人たちで構成される騎士団に所属する癒術師と呼ばれるようになっていた。
……と言ってもここで暮らすようになって日は浅いけど。
まさかこんな場所で灸の知識が役にたつとはな…
俺の友人は鍼灸師になるために3年制の養成学校へと通っていて灸に興味のない俺にあれこれと苦労話や愚痴をよく言っていた。
その結果、俺も最低限の知識が身についていて
この異世界にも灸草である《よもぎ》や《もぐさ》は手に入ったし高級品でもなかった。
《よもぎ》は春になると道ばたとか河原やアスファルトのすき間にさえ芽を出す生命力旺盛な植物で古くから身近な薬草として、傷口によもぎの葉をもんで汁をつけて止血したり、虫さされやかゆみ止めにも使われていたし、乾燥したよもぎは艾葉(がいよう)と呼ばれ、生薬としてカラダを温め腹痛、胸やけ、下痢、便秘などの症状でも使われていた。
《よもぎ》は草餅やよもぎ団子として食べるものにもなってるし人体に悪い影響はないのだ。
それに《もぐさ》(ヨモギの葉の裏にある繊毛を精製したもの。)についても碧透が説明すれば一緒に暮らしている馬獣人のセフィが多くの手間暇がかかるそれを簡単に手に入れてきたのだった。
ツボの位置は友人が試験のために暗記したいと本を俺に渡して出題させてたから何個かの名前と効能とかも覚えていたのだ。
実践経験などないが、この異世界では灸を知っているものがいるはずもなく俺のあってるのかわからない知識による草に火をつける新感覚な遊びならぬ刺激的な体験をしたいという物好きな獣人たちが訪れるようになっていた。
多少間違ったことをしても人間と違って厚くて丈夫な皮膚や毛で覆われてる獣人たちは火傷をすることもなく楽しんでいて腰痛や肩こり、張りで悩んでる馬獣人のなかには効き目があるものもいたらしく高評価されあっというまに広まったのだった。
肩こりや腰痛は異世界だろうが共通の悩みのようだな。
まぁ、肩こりや腰痛は体の歪みだったり血の流れが悪かったりすることが原因のことも多くあるし、患部を温めて筋の硬さを緩ませてたり血管を拡張させて血流をよくしたりツボの刺激で痛みを鎮めたり体を温めることで不調が改善するのもおかしな話ではない。
それに体を温めると免疫力が上がると何かで読んだことがあるし。
この世界では資格も何も必要ないのだからやってみたら…
気づけば癒術師と呼ばるようになっていた。
この世界の癒術師がどんなものか知らないけれど
俺がそんなふうに呼ばれてていいんだろうか?
セフィに聞けば癒術師は少なくその定義があいまいなのだと言っていた。
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