【一】突然すぎる婚約話

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「……ん?」  一瞬、母様が発した言葉の意味がわからず、首を傾げ自分の中で整理を試みる。  今月か、来月中に、婚姻を、結ぶ。  婚姻を結ぶというのは結婚するということで間違いないだろう。 「え? 誰と誰が?」 「だから、あんたたちふたりが」  母様の答えに、私の脳はついに処理しきれなくなった。  いつもは感情をあまり表に出さないミヅハも、さすがに目を丸くしている。 「私たちが、ちょいとばかり婚姻を結ぶってなに」  ちょっとそこまでふたりで買い物に行ってきてくれ、みたいなノリで結ぶ婚姻なんてあるのか。  あまりにも突然の頼みごとに状況がうまく呑み込めない私の横で、黙っていたミヅハが口を開く。 「なぜ、俺といつきなんだ」 「それは、あんたならわかるはずだよ、ミヅハ」  母様の強い眼差しを受けたミヅハは、視線を両の手を置く自分の膝に落とし、暫し黙考する。  そして、思い当たる節があったようで、顔を上げると母様を真っ直ぐに見つめた。 「あの時の言葉に繋がるのか?」 「ああ、そうだよ」 「そう、か……」 「な、なんのこと?」  何やらふたりの間で通じるものがあるようだが、私には全くわからない。  完璧に置いてけぼりをくらっている状態だ。  ミヅハにはわかる”あの時の言葉”とは何なのか。  わからないのなら尋ねるのが一番。  私は姿勢を正すと、母様とミヅハへ交互に視線を送る。 「お願いだから、私にもわかるように説明してほしいんだけど」  私の真剣な眼差しに、母様は表情を硬く厳しいものに変え…… 「あいたたたたたたた!」  突然、腹部を押さえながらうずくまった。
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