371人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「……ん?」
一瞬、母様が発した言葉の意味がわからず、首を傾げ自分の中で整理を試みる。
今月か、来月中に、婚姻を、結ぶ。
婚姻を結ぶというのは結婚するということで間違いないだろう。
「え? 誰と誰が?」
「だから、あんたたちふたりが」
母様の答えに、私の脳はついに処理しきれなくなった。
いつもは感情をあまり表に出さないミヅハも、さすがに目を丸くしている。
「私たちが、ちょいとばかり婚姻を結ぶってなに」
ちょっとそこまでふたりで買い物に行ってきてくれ、みたいなノリで結ぶ婚姻なんてあるのか。
あまりにも突然の頼みごとに状況がうまく呑み込めない私の横で、黙っていたミヅハが口を開く。
「なぜ、俺といつきなんだ」
「それは、あんたならわかるはずだよ、ミヅハ」
母様の強い眼差しを受けたミヅハは、視線を両の手を置く自分の膝に落とし、暫し黙考する。
そして、思い当たる節があったようで、顔を上げると母様を真っ直ぐに見つめた。
「あの時の言葉に繋がるのか?」
「ああ、そうだよ」
「そう、か……」
「な、なんのこと?」
何やらふたりの間で通じるものがあるようだが、私には全くわからない。
完璧に置いてけぼりをくらっている状態だ。
ミヅハにはわかる”あの時の言葉”とは何なのか。
わからないのなら尋ねるのが一番。
私は姿勢を正すと、母様とミヅハへ交互に視線を送る。
「お願いだから、私にもわかるように説明してほしいんだけど」
私の真剣な眼差しに、母様は表情を硬く厳しいものに変え……
「あいたたたたたたた!」
突然、腹部を押さえながらうずくまった。
最初のコメントを投稿しよう!