【一】突然すぎる婚約話

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 豆狸の好物がみ◯りのたぬきなんて、誰が想像できるだろうか。  響きだけでもシュール過ぎる。 「わかった。今度プレゼントさせてもらうね」 「ありがとうございます! では、いつき様、こちらへ」  豆ちゃんは人の目からうまく隠れられる大木に私を案内すると、どこからか青々とした葉っぱを一枚取り出して私に差し出した。 「それを頭に乗せてください」  どうやら、豆ちゃんが化ける際にやるように、私も真似る必要があるらしい。 「こう?」  傘の下で、落ちないように葉を頭に乗せると、豆ちゃんは「お上手です!」と拍手と共に褒めてくれた。  モフモフの狸が小さな手をパチパチと叩いている様に癒されていれば、豆ちゃんは「いざ! ドロン!」と声を上げる。  一見、ふざけているような掛け声なのだが、豆ちゃんはいつもこの「ドロン」を呪文としているのだ。  なぜドロンなのか。  以前それを尋ねたところ『なんとなくです』と答えられた。  肝心なのは、掛け声の際に発生させる気合と妖気らしい。  爆発させるように妖気を放出し、素早く纏うとのことなのだが、人間である私には少し難しい感覚であり、理解できなかった……のだけど。 「わっ」  今、少しだけ纏うという感覚が理解できた気がした。  目に見えない何かが、全身に貼り付いた感触がしたのだ。
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