4 現実逃避

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 エバの異変に気付いたアリスは、さっとサイドテーブルに手を伸ばし、精神安定のお香を焚き始める。 「温かいハーブティーはいかがですか?」 「……お願い」  エバは涙を拭きながらそう言った。  アリスの優しく柔らかい雰囲気とさりげない気遣いのおかげで、エバの冷え切った心は少しだけ温まる。 「今日はとてもいい天気ですよ。テラスでご昼食はいかがですか?」  アリスはそう言いながら、体を起こしたエバにティーカップを手渡した。 「食欲はないけど……。少しだけ外の空気に触れてもいいかな」  前向きな言葉を聞いたアリスの顔は、パッと明るくなる。 「では、後ほどご用意いたしますね」 「ありがとう」 「お礼など……。私にはもったいないお言葉です」  アリスは顔を赤くし、満面の笑みを浮かべる。  その反応が可笑しくて、可愛くて、エバは表情を緩めた。 「そういえば、この怪我……何が原因なの? 私、何も覚えていないの」  エバは記憶を失ったふりをして、事情を聞いてみた。  ベッド近くの窓を開けていたアリスは、その質問を聞いた途端、体をビクつかせて固まる。 「……あの……私の口からは申し上げにくいのですが……」  アリスは少しうつむき加減で口ごもる。 「気にしないで、大丈夫」 「あの……」  アリスは顔を強張らせていた。 「大丈夫だよ。覚悟はしてる。どうせ、いつかは知ることになるんだから」  その言葉を聞いて、アリスは意を決して口を開いた。 「では……。1週間前の晩のことです。お嬢様はお1人でお出かけになっていたのですが、その時に……何者かに襲われたようで……」  エバは軽く頷く。  それが悪魔の生贄と関係しているのだろう、とエバは思った。 「それ以上はいいよ。辛い思いをさせてごめんね」 「いいえ……」  アリスは悲しい表情を浮かべる。 「アリス、もう少し質問してもいいかな? 別の質問だから」 「はい」 「アダムは元気?」  アリスの表情は再び強張った。
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