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仕事が早いアリスは、1時間後に過去の情報を持ってきてくれた。
「この板……何?」
エバは、受け取った手のひらサイズの透明板を不思議そうに眺めていた。
「これは、小型の情報端末機でございます。お嬢様はなくされたようだったので、新しく準備いたしました」
知っていて当然のような口ぶりに、エバは動揺した。
「え? 小型……? ごめん、これが何かわからない」
エバの知っている情報端末機はもっと大きく、持ち運べるようなものではなかった。
「この端末機1つで世界中の情報が手に入ります。魔力通信も可能となっております」
5年の進歩の早さにエバは目を丸くした。
こんな便利なものがあったらアダムと内密に連絡できただろう、と自分の運の悪さを呪ってしまう。
「これはアダムも持っているの?」
「それは……。アダム様は持っていらっしゃるようですが、お使いになっていないようで……」
「そう。まあ、いいや。説明を続けてくれる?」
アダムはリリスからの連絡を拒否しているのだろう、とエバは察し、そのことについて追求しなかった。
「はい、かしこまりました。まずは、画面を触ってください」
画面に触ると、端末機に映像が表示された。
「お嬢様の魔力に反応して使用可能になりますので、他の者に使用されることはございません——」
画面には、小さな四角形がたくさん並んでおり、『文書保存』、『画像保存』、『メール』『検索』などの言葉がそれぞれの中に表示されていた。
「『検索』と書かれた四角形を触って頂きますと、キーワード検索が可能でございます。そして——」
アリスは細かく情報収拾の方法について説明した後、すでに端末にまとめておいたリリスの情報について話し始める。
「——ここに保管されているお嬢様の過去の記録などは、ジョーゼルカ家に関係のない者からの情報です。事実ではない可能性もありますので、ご自身でご判断ください……」
「この方がいいわ。ありがとう。足りない情報は自分で検索するよ」
辛辣な情報しかないことは、アリスもエバもわかっていたので、互いに深掘りすることはなかった。
「他に便利な機能はある?」
「そうですね……。魔力ペンで書いた資料などは、専用紙に書く必要はなく、『文書保存』を触って頂くと……」
それを押すと、目の前に大きな画面が投影された。
「ここに意識操作、または手書きで直接記入することができ、保存も可能です。画面角度も自由に変えることが可能です」
あまりにも便利な機能に、エバは驚きっぱなしだった。
「ありがとう。わからなかったら質問する」
「かしこまりました。他に何かご用はございますか?」
「今はないかな。とりあえず、1人にしてくれる?」
「畏まりました。では、昼食の時間にお伺いいたします。何かご用がありましたら、魔力ベルでお呼びください」
「うん。ありがとう」
アリスはその場で一礼し、部屋から出て行った。
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