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当時、エバは魔法学院1年だった。
魔法学院総合図書館、自習スペース。
エバは1人で4人席テーブルで勉強していた。
「——よろしければ、隣に座ってもいいですか?」
少年の声がエバの耳に入った。
——空席は他にたくさんあるのに……。
エバは不審に思いながらその声の方へ顔を向ける。
その直後、エバの体は一気に熱を帯びた。
サラサラの栗色の髪、緑色のクリクリとした目を持った少年に、エバは一目惚れしてしまう。
斜めに体を傾けて話しかける仕草が可愛く、物腰が柔らかく、とにかく素敵だ、とエバは思った。
「は、はい、どうぞ……」
エバは照れながら了承した。
その少年はにこやかな表情で椅子を引き、隣に座る。
——この立ち居振る舞いからして、貴族の子かもしれない。平民の私に何か用かな……?
「君、魔生物学部1年のエバ・シャーリーさんだよね?」
「え? どうして私の名前を?」
「入学試験の成績で勝てなかったのは、エバさんだけでしたから——」
エバは急に下の名前で呼ばれたので、顔を少し赤くする。
「——それに入学式の時、隣に座っていたので……あ、すみません。僕は魔法教育学部1年、アダム・スコットと言います」
アダムは爽やかな笑顔で自己紹介した。
「そうですか……」
エバは緊張していたせいで、上手く言葉が返せなかった。
「僕は没落貴族出身でして。特待生で入らないと学費が厳しいのですよ」
「はい……?」
エバは話の意図がわからず、首を傾げた。
アダムはエバに体を少し寄せ、顔を近付ける。
エバは更に顔を赤くし、ドキドキしていた。
「実は……その肩書きで肩身がせまい思いをしておりまして。よかったら、お友達になって頂けませんか? ……というのは言い訳で……僕、エバさんに一目惚れしてしまったんです……」
アダムは顔を真っ赤にし、小声でそう告げた。
「へ?」
エバは目を大きく開いて、アダムを凝視した。
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