6 過去2

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6 過去2

 エバは端末機でリリスの過去を読み進んでいる途中、ある一文を見て固まった。 『——エバ・シャーリーが死んだ原因はリリス・ジョーゼルカ』  エバの脳裏に、死んだ日のことが鮮明に蘇ってきた——。 ***  歴3020年6月12日。  この日はエバとアダムが恋人になってちょうど4年になる日で、2人はその日に結婚しようと約束していた。   しかし、非情にもその日はアダムとリリスが結婚する日へと変わる。  リリスが親の権力を利用し、アダムと無理やり結婚することになっていた。  エバの実家。  エバは喪失感と憎悪で精神を病み、数日前から帰省していた。 「エバ、ご飯よ……。少しでいいから食べられない?」  エバの母親は部屋まで朝食を持ってきてくれたが、エバは無言のままベッドに横たわっていた。 「ここに置いておくわね……」  母親はそのまま静かに部屋を出て行った。  ——ママごめん、もう生きる意味を失ったの。このまま食べずに死ねるのなら、なんて楽なんだろう。  しばらくすると、遠くから鐘の音が聞こえた。  ——今は……何時?  エバは壁にかけられた時計をおもむろに見る。  針は11時を指していた。  ——12時になったら……、アダムがリリスのものになってしまう。 「だめ……」  エバは家を飛び出し、裸足のまま結婚式会場へ向かった。
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