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アダムの記憶喪失について詳細を得られなかったエバは、呼び鈴をならしてアリスを呼び出した。
「失礼いたします」
「アリス、呼び出してごめんなさい」
「とんでもございません。お嬢様のお役に立てることが、私の喜びでございますので」
あまりにも低姿勢すぎるアリスにエバは苦笑する。
平民出身のエバには慣れない習慣だ。
「それで、呼び出した理由なんだけど……。アダムのことを聞きたくて」
「どういった内容でしょうか?」
「アダムが一部の記憶を喪失している、という情報を得たの。詳細を知らないかなと思って……」
「そのことでしたら……」
アリスは少し言いにくそうな顔つきで話し始めた。
「私は原因を存じ上げませんが……、エバ・シャーリーという方の名前を出すと、必ず精神異常の発作や嘔吐などの症状が出てしまうようです。このお屋敷や職場の魔法学院では、その方の名前は禁句になっております」
「そう……」
エバはショックを受け、しばらく無言になった。
「あの……、先ほど執事長から伺ったのですが、本日はアダム様が夕食に顔を出されるそうです——」
「——本当に!?」
「はい」
「私も同席できる?」
「もちろんでございます。お嬢様とアダム様の結婚記念祝いの食事会ですから。準備をしておきますね!」
アリスは喜んでいたが、エバの思いは複雑だった。
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