3 悪魔契約

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3 悪魔契約

 エバの転生前——悪魔と出会った時に遡る。  死んでから、随分と時間が経過していた。  エバは暗くて濃い霧の中を、ずっと、ずっと……1人で彷徨っていた。  死んだ後は何もかもを忘れ、無に消えると思っていたのだが……。  それは叶わなかった。  ——どうして?  いつまでたっても自分の存在は消えず、無音の場所にずっと閉じ込められていた。  ——怖い。  そんな感情は、徐々に、エバを憎悪の色に染めていった。 「なぜ、私がこんな目に! なぜ、あの女に!」  憎悪に満ちた感情は、ある者を呼び寄せてしまったのかもしれない。 『——見つけたぞ』  邪悪な声がエバの中に響いた。 「誰……?」  エバはあたりを見回すが、人影すら見えない。 「——きゃっ!?」  巨大な漆黒の手が、霧の向こうから突然伸びるように現れ、エバはその手に体を鷲掴みにされてしまった。
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