3 悪魔契約

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『ヒヒヒヒヒッ。もう逃げらんねーよ』  声の主の顔が霧の中から現れた。  口からはみ出る長いキバ、何もかも吸い込んでしまいそうな真っ赤な三つ目、霧よりも漆黒の皮膚、エバの体よりも大きな顔。  それは、巨大な悪魔だった。  エバはこれ以上なくらいに、震え上がる。 『ヒヒヒヒッ。お前、あんな酷い死に方してよー。散々だったな』    ——そのとおり……。 『まあ、あんな女に目をつけられたのが運の尽きだったな』  ——そうかもしれない。でも、どうすればよかったの……?  エバは微笑みかけるアダム——元婚約者の顔を思い出す。  憎しみで満たされていても、アダムへの愛情は変わらない。  想いが募り、胸が張り裂けそうだ。 「アダム……」 『その男にも原因があるんじゃねーのか?』 「——ないです! アダムは……抵抗さえできなかったんです……。悪いのはすべてあの女です! あの女がなにもかもめちゃくちゃに……」  悪魔の目は弓なりになった。 『ヒヒヒヒッ。いいぜ、その憎悪が堪らないぜ。気に入った。お前の願いを叶えてやる』
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