小蝿の晴天

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小蝿の晴天

目覚めはいつも、朝とは限らない。 自室ではない事も・・・。 肌触りの良い毛布にコーヒーの匂いがする朝が最高なら、汗臭い体臭を放つ身体に硬い木のベンチは最低か。 狭く、硬いベンチに横たわり真上から真っ正面に受ける日差しの中、黒いゴマのようなハエが飛び交う。 「なんだ、あれ?」 「たかし、見るんじゃないの」 ーー母親と子供。 すれ違い、遠ざかる後ろ姿の親子に舌打ちをした。 ズボンから携帯を取り、ディスプレイに目を移す。 ーー11時32分 ベンチから上体を起こした。 ーーくせぇ。咄嗟に右の二の腕を鼻に寄せ、匂いを嗅いでいた。 昼間前の日差しはキツく、額の汗が止まらない。拭う度に不快な思いが増し、苛立ち、膝が震えた。 このベンチから30メートル離れた先に、日影のベンチがあった。硬い木の上で数時間、横たわった代償は背中の痛みを伴う張り、腰に手を当て背筋を伸ばしてから、ベンチからベンチへ・・・移動した。 ポケットの携帯が震度をしている。 ズボンのポケットに手を入れ、携帯に指が触れ・・・る サクッ ん・・・あれ 脇腹が冷たくなる。 バタバタと複数の足音が遠のいて行った。 右脇に棒のような物が身体から突き出て、ドロっとした液体がベンチに垂れ流れた。 右手でベンチに触れる。 右手を目の前に・・・赤く染まった手。 まじまじとついた液体を見るなり、ベンチから前に倒れ込んだ。 微かに聞こえる。 女の叫び声と子供も泣き声・・・。 意識が狭くなり、縮み、飛んだ。
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