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港南台駅に到着したのは、21時を10分くらいを過ぎていた頃だと思う。
乗り継ぎが上手く、さほど時間がかからずに移動してきた。到着する頃に高菜さんが、えらくご機嫌だったのを覚えている。
駅前から日野に向かい坂を下った。5分ほど歩いただろうか、車道沿いにあるスナックに高菜さんが入っていく。
店の名は[ステラ]と書いてあったと思う。店の前で一瞬、立ち尽くしたが店の中から高菜さんがドアを開き、手招きをしていたので急いで入った。中は5人も横並びで座れば一杯のカウンターと、4人掛けのソファーがあるテーブルが一つの狭い店だった。
「高菜さん、スナックですか」
「ああ、こうゆう店に来たことないのか」
「ないですよ。僕はまだ23ですから」
カウンターの奥から恰幅の良い女性が笑顔で迎える「孝彦ちゃん。久しぶり」と高菜さんの手を握った。
-高菜孝彦。
「知り合いですか」
「ああ、中学の先輩。昔は美人で有名だったが酒とつまみが彼女を変えた」
「なに!タケヒコ!今日はもういいわ、帰んなさい。もう当分、来なくていいわ」
「冗談だよ、冗談。今も目を薄めりゃ、綺麗なまんま」と高菜さんは大笑いをする。
「あんた、いい加減に」とビール瓶を振り上げる女性に圧倒されたが、程なく落ち着き、カウンターに並びで高菜さんと座った。
何だかんだで、高菜さんが言葉を発する前に、ビールが二人の前に置かれた。
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