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「若い男性ですか?」
「ああ、何か?」
若い男性は公園で目覚めた時、視界にいた記憶がなかった。
「確か、倒れ込みながら親子の叫び声を聞いたつもりだったので、てっきり近くいた親子連れが通報をして下さったんだと思って」
「確かに親子連れもいたと言っていた。だけど、通報したのは若い男性だよ」
刑事二人の表情は変わらない。
「誰だか、分かってるんですか?」
「まだね。分かっていない、名前を言わなかったからね。名前が分かったら、君のお母さんがお礼がしたいから、知らせて欲しいと言われている」片瀬刑事は立ち上がり、パイプ椅子を二つに畳んだ。
「大丈夫か?」加茂刑事が僕の肩を優しく叩いた。
「大丈夫です。少し疲れただけですから」
「そうか。何か思い出したら知らせください。今日はこの辺で終わりにしよう」と片瀬刑事と加茂刑事は立ち上がっている。
「あ、はい」
二人の刑事を見上げた。
「後日で良いので、被害届を書いてもらうから」と片瀬刑事が言った。
「被害届・・・ですか?」
二人の刑事はパイプ椅子を抱えながら話を続ける。
「公然な犯罪だから、警察として捜査は開始しているが、被害届はやはり必要だから」
「出さないと捜査は止まるのですか?」
「今回に限っては、継続するよ。君以外に危険が及ぶ可能性があるから・・・どうして?捜査やめさせたいのかい?」
「いえ。そういう訳では・・・そうですか」
午後の13時から始まった調書は、15時前に終わった。
16時を過ぎていた頃に、ドアが開き[母親]と名乗る女性が再び、病室を訪れた。
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