小蝿の晴天

13/19
前へ
/31ページ
次へ
「若い男性ですか?」 「ああ、何か?」 若い男性は公園で目覚めた時、視界にいた記憶がなかった。 「確か、倒れ込みながら親子の叫び声を聞いたつもりだったので、てっきり近くいた親子連れが通報をして下さったんだと思って」 「確かに親子連れもいたと言っていた。だけど、通報したのは若い男性だよ」 刑事二人の表情は変わらない。 「誰だか、分かってるんですか?」 「まだね。分かっていない、名前を言わなかったからね。名前が分かったら、君のお母さんがお礼がしたいから、知らせて欲しいと言われている」片瀬刑事は立ち上がり、パイプ椅子を二つに畳んだ。 「大丈夫か?」加茂刑事が僕の肩を優しく叩いた。 「大丈夫です。少し疲れただけですから」 「そうか。何か思い出したら知らせください。今日はこの辺で終わりにしよう」と片瀬刑事と加茂刑事は立ち上がっている。 「あ、はい」 二人の刑事を見上げた。 「後日で良いので、被害届を書いてもらうから」と片瀬刑事が言った。 「被害届・・・ですか?」 二人の刑事はパイプ椅子を抱えながら話を続ける。 「公然な犯罪だから、警察として捜査は開始しているが、被害届はやはり必要だから」 「出さないと捜査は止まるのですか?」 「今回に限っては、継続するよ。君以外に危険が及ぶ可能性があるから・・・どうして?捜査やめさせたいのかい?」 「いえ。そういう訳では・・・そうですか」 午後の13時から始まった調書は、15時前に終わった。 16時を過ぎていた頃に、ドアが開き[母親]と名乗る女性が再び、病室を訪れた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加