小蝿の晴天

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「で、高倉さんは?どうしたんですか?」 「高菜さんが、どうしても来てくれって言うから・・・まぁ、暇だったし。事件に巻き込まれる人って興味あるから」 高倉さんは笑い続ける。 ーー高倉理沙。綺麗な顔立ちから想像もつかない言葉を発する。うちの工場のアイドル的な存在。普段は事務所で経理や事務を行なっている。僕とはあまり接点はなく、去年の忘年会にたまたま横の席になり会話を初めてした。現在は僕の3つ上、26歳だった気がする。小顔で足が長く、モデル体型。20代前半は芸能事務所からスカウトされた程、冗談か真実かは不明だが、スカウトされたとしても不思議ではない納得する。 「刺された人に興味が・・・そ、そんな理由でここに来たのですか?」 「ウケる。信じてる・・・冗談よ。大丈夫?刺されて?」 高倉さんは自分の腹部に目をやった。 「はぁ、一応、抜糸が終わりました。大丈夫っすよ。あと3日もすれば退院です」 「そう。なんだか、犯人は通り魔的なヤツなんでしょ?」 「よく、分かりません」 僕は両手を広げてみせた。 「良太、犯人は捕まりそうなのか?」 「警察からは何も」 「しかし、良かった。もしもの場合は、、、本当にマジで。色々と申し訳なくてさ」と高菜さんが両手を合わせ僕を拝む。 「勝手に殺さないで下さいよ!」 「済まない。もしもってさ、ことだよ」 「ほら、足あるよ。高菜さん」と高倉さんが 掛け布団をめくった。 「二人とも、勘弁して下さいよ。何をしに来たんですか?」
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