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刺される瞬間の着信は母親だった。入院中に電源が落ちた携帯は、看護師の森井に頼み込み充電器を借りて復帰してあったが、母親に連絡は今の状況を説明できない為、嘘を付かなくてはならずに連絡をしなかった。
入院中に会社、母親から連絡が無いところをみると、伊澤が何かしら動いて何らかを伝えてあるのだろうと思った。あえて自分から連絡する事で、母親やらの身に危険が及ぶ可能性を恐れていた。
だが、そろそろ実家に連絡を入れないと母親が心配する。こちらに上京されて伊澤さんにでも顔を合わせたのなら、ことが混乱していくと思う。会社に続いて実家に電話をかけた。
数回のコール後に母親が電話に出た「はい、はい、どなた」と。
「ああ、母ちゃん。良太だけど」
「良太!あんた連絡してから2週間も経つわよ。何をやっているの?」
耳元で急に母親に怒鳴られ、耳鳴りがした。
「悪りぃな、母ちゃん。心配かけて・・・用事があった?」
「全く!親の気も知らないで。小百合が、そっちにまた遊びに行きたいらしいけど、アンタ休みはいつなんだろうってーー小百合からも連絡あったでしょ」
5つ離れた妹の小百合からも確かに、LINEで連絡が入っていた。中々、既読にならないので長々と愚痴が書いてあった。
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