小蝿の晴天

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「良太。良太」 ーーん? 「気が付いたのね」 ベットの周りにスーツを着た30代から40代の男性二人組みに、60歳は超えてるだろう女性が自分に話しかけてくる。 「いやぁ、お母さん。大事に至らなくて良かったですね」 「本当に、心配しました。通報して下さった方に感謝をと思います」 女性は何度も二人組に頭を下げる。 「発見と同時の通報でしたから、直ぐに救急車も駆けつけました。大事に至らなくてよかったですね」 ーーお母さん?何が始まっているんだ。 「あの、良太君。お目覚めかな」 二人組みの男性が話しかける。 「良太、心配したのよ」 初老の女性は、目尻から流れでる涙をハンカチで拭っていた。 「落ち着いたら、お話を聞かせて下さい。申し遅れましたが、港南警察署の片瀬(かたせ)加茂(かも)と言います」 「あの・・・」 と言葉を言いかけた瞬間に、 「あゝ・・・良かった。本当に良かった」と初老の女性は泣き崩れて、床に膝をついてしまった。 それを見た二人組みは「私どもはまた後で、来ますので」と顔を見合わせて退室してしまった。 ーーいてぇ。 あっという間に、女性は立ち上がり自分の脇腹に手を乗せた。 「痛い?」 「何なんですか?あんた」 見上げる女性は一瞬で別人のように、ほくそ笑み悪魔に見えた。 「ん?母親よ・・・母親って設定よ」 「設定?何を・・・うわぁ、くぅ」 女性は力を込め、僕の言葉を遮るように傷口に力を加えてきた。 「あら、ごめんなさい」 「やめて、やめて下さい」 「泣きそうね。男の子でしょ。男の子は強くあれよ。ハハハ、私凄い、まさしく母親の言葉ね」と女性は笑っていた。 「くふぁ、もう、よせ。やめてくれ・・・やめて下さい。お願いします」
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