51人が本棚に入れています
本棚に追加
/187ページ
***
国王就任式があった日の夜。
「——うわ……」
夕翔は目の前に広がる景色を見た瞬間、思わず感嘆の声を漏らした。
「気に入っていただけましたか?」
「もちろんです、伊月さん!」
「伊月、ありがとう」
花奈は夕翔の横で嬉しそうに微笑んでいた。
伊月が2人を連れて来たこの場所は、桃色の光を放つ花が咲き乱れる広大な草原だった。
結界を張り巡らせていたので、3人以外は誰もいない。
「姉上、ここで結婚の儀を執り行いますね」
「伊月……場所をここにしてくれて本当にありがとう」
花奈は久しぶりに来た大好きな場所を目にして涙ぐんでいた。
そんな花奈を夕翔は肩を抱き寄せる。
「本当に綺麗な場所だな」
「うん、私の大好きな場所なんだよ。伊月と思い出の場所でもあるの。その時は昼間だったけど、こっそり家を抜け出していっぱい話をしたんだよ」
伊月はもつられて目を潤ませていた。
「そっか……2人の大切な場所に連れてきてくれてありがとう、伊月さん」
「おふたりにはこの場所がぴったりだと思いまして。さあ、始めましょう」
「うん!」
「お願いします」
最初のコメントを投稿しよう!