疾走愛ー決意ー

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その4 多美代 おけいはいつもまっすぐだ この矢吹さんを前にしても、逃げずに、主張すべきはしてるし… 立派だな テツヤのことだって、ちゃんと気遣ってる でもさ…、矢吹先輩があんたに言ってること、聞いとく価値あるよ 私なんかじゃ、同じこと言っても愚にもつかないからね ケガから回復したばかりで気の毒な気もするけど、おけい、よくかみ砕いとけ ... 矢吹さんは荒子さんを支える立場で、あの本郷と対峙しなきゃなんないんだ そんな役、誰にでもできることじゃない 自分だけでは難しいとなりゃ、どうするか… そう考えたら、お前に行き着くんだ、”わかってる”人間はさ 私程度でも、お前なら本郷麻衣をけん制できるかもって そのくらい、気が回るさ でもね… ... だから、矢吹さんの話はすごいよ お前の南玉連合入りを大反対してるテツヤのこと、百も承知でだぞ そんで、ここまで言い放つんだ 荒子さんの子飼いの私だって、”あえて”同席させて、その前で‥ この人は自分より下の私らを心配してくれて、お前にアプローチしてるんだ 自分の腰が引けてるんじゃないんだよ ... 行き着くのは、まあ、あの”化け物”だ 本郷麻衣なんだよ、要は… あいつが南玉連合に寄生して、内部から血を吸い尽くそうとしてる あの野郎だけは、空手の猛者でも拳ではぶっ飛ばせないんだ 計算高いよ、あの”化け物” 昨日の総集会では、奴の恐ろしさ、思い知ったさ 一片にはいかないんだ 長くなるよ、闘いは… 私からもさ…、無理は承知でお前にラブコールさせてもらう おけい、一緒にやらないか! ところがだったわ… ... 矢吹先輩が帰った後、私たち3人はこの釣り堀でコイを釣ってた 「ハハハ…。おけい、お前、釣りの才能あるよ。凄いじゃん、えーと…、もう4匹か」 おけい、テツヤにそう褒められても、あまり反応してないや ブスっとした表情で…、なんか、機嫌悪いし… 「おい、おけい…。テツヤに八つ当たりか?さっきの矢吹先輩の話でさ、テツヤにああだこうだってことじゃないだろーが!あのなあ、テツヤはよう…」 「多美ちゃん、やめとけって。ハハハ…、この3人が揃って、湿っぽいのはダメだろ。まあ、楽しくコイ釣ろうや。恋もね…、へへ…」 なんか、テツヤ見てるとつらいや おけい、知ってるのかよ コイツはなあ… ... そんなテツヤに、おけいがぶっきらぼうに言った 「テツヤ、お前さ、私を南玉になんか絶対に入れないって宣言してたよな?なら、さっき矢吹先輩がああ言ってて、なんで何にもなしなんだよ?あの先輩には、ひょっとして去勢されてんのか、お前さー!」 コノヤロー! 「おけい、テメー、テツヤに謝れ!」 「やだよ。病院であんだけのタンカ吐いたんだ。いくら尊敬する先輩にでも、一言あるべきだろうが!」 「テメー、表出ろ!病院住まいでフヤケたアタマ、覚ましてやる!」 「おお、上等だ、多美!ボケてんのはお前らの方だしな。やってやるよ!」 私らは釣り竿をほん投げて立ち上がり、互いに胸ぐらを掴みあっていた…
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