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流石、自分が選んだ魔法少女だ。
ワシはこっそりビルの屋上から彼女の姿を見つめてほくそ笑んでいた。
「この世に別れを言いな!“ダンデライオン・フラッシュ”!」
彼女がステッキを掲げて叫ぶと同時に、凄まじい光が放たれる。その中で、巨人は炭のようなものとなって消滅していった。
ダンデライオン――蒲公英。
花言葉はいくつもある。一見すると戦いに向くようには見えないだろう。しかし。
――そのうちの一つ……発想を変えてみたというわけだな。
「蒲公英の花言葉は“別離”だ。この世からバイバイしやがれ、クソモンスターめ!」
別れ――それを、“この世からの別れ”とすることで必殺技に昇華させたのである。まさに、蒲公英。どこにでも咲くしぶとい花、彼女らしい技ではないか。まさか、一日で――勉強嫌いの彼女が自力で新しい技を産み出そうとは思いもしていなかったことだ。
さすが自分と、神様が選んだ娘というだけあるだろう。
――この調子なら、魔王を倒せるようになる日も近いかもしれんな。
ワシは心底満足だった。不満があるとすれば、ひとつだけだろう。
――あとはもう少し……ワシに対する扱いが優しくなれば文句はないとゆーのに!
そう、それだけが非常に問題なのである。
花の妖精でフラワー界のマスコットたる自分が――最近ちょっと殴られるのが気持ちよくなってきているなんて、大問題だ。
――ワシは、ドMにはなりたくないのだーっ!
心の中の切実な叫びは。
残念ながら肝心の魔法少女には、まったく届きそうもない。
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