いろ、いろ、いろ。

3/4
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
『ありがとう、メグミちゃん。メグミちゃんのおかげ、だね。メグミちゃんが頑張れって背中を押してくれたから、私……ヒバリ君と、お付き合いできるようになったの』 ――ふざけんなふざけんなふざけんな!私達は、あんたのリア充なんか1ミリも見たくなかったんだっつーの!あんたが無様にヒバリ君にフラれるのを見たかったんだつーの!意味わかんない!  神様とやらがいるのなら、本当に空気を読まないなと思う。  あのアズサが。自分より何もかも格下のアズサが、あんな素晴らしい彼氏を手に入れるだなんて。身の程知らずにもほどがある。間違っている。彼女は一生自分の下で、ヘイコラしながら支配されるために産まれてきた存在だ。自分よりも一瞬でも上の幸せを手に入れるなんて、そんなことあっていいはずがないというのに! ――ぶっ壊してやりたい。……そうよ、お願いっていうなら、自分に絡むお願いじゃなくてもいいでしょ?  ゆえに。今、私は此処にいるのである。  都市伝説やおまじないに詳しいアズサに聞いたら、彼女は何も気づかず笑顔で教えてくれたのだ。春のチューリップの季節。F公園のチューリップの花壇の前で、逢魔が時にお願いをすると、隣接する神社の神様がやってきてお願いを叶えてくれるのだ、と。いかにも頭カラッポな馬鹿女が信じそうな、ありきたりなおまじないである。祈るだけで叶えてくれる神様がいるなら、自分はこんなに悔しい思いなどしていないというのに。  そう、頭から信じているわけでもないのに私が此処に来たのは。それほどまでにアズサに対して腹が立ったというのもあるし――そのアズサに聞いたおまじないの力で彼女の幸せがブッ壊れたら面白いから、というのもある。何も、失敗したらデメリットのあるような都市伝説でもないのだから。精々、うまくいかなかったらチューリップの色が変わらなかったりする、くらいのものであるようだし。 『私、花言葉って大好きなんだ。だから結構好きで調べるの。チューリップにも花言葉あるんだよ、知ってた?それも、色ごとに違ったりするのね』  私が怒っていることなど露ほどもしらぬ愚かな女は。ニコニコしながら講釈を垂れてきたのである。 『チューリップ全般の花言葉は“思いやり”。だからそのチューリップに宿るっていう神様は、思いやり深い人であればあるほど味方をしてくれるんだって。それでね、チューリップには色ごとに違う花言葉もあるんだよ』  彼女いわく。  赤いチューリップの花言葉は“愛の告白”。  白いチューリップの花言葉は“失われた愛”。  ピンクのチューリップの花言葉は“愛の芽生え”と“誠実な愛”。  黄色いチューリップの花言葉は“望みのない恋”“名声”。  そして紫のチューリップの花言葉は“不滅の愛”であるのだという。  願いを告げると、普段はピンクと黄色の斑みたいな模様をしているチューリップ畑の花が、全て特定の色に変わるというのだ。それも、願った願いに応じて。神様が、その答えを示すように染まるらしいのである。 『アズサちゃん、叶えたいお願いがあるの?だったら、今の時期は丁度いいよ!アズサちゃんは優しいから、きっと神様がお願い叶えてくれると思うの!』
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!