1.美少女に突然ファンだと告げられて

6/9
前へ
/43ページ
次へ
 ごく控えめに言って、めちゃくちゃ可愛かった。一瞬、地上に降り立った天使かと思った。  プリントを掴んだままぶらりと右手を下ろし、左手の甲で顔を覆う。  白ゆり、とまた脳内で繰り返す。  その時ザッ、と上靴で地面を擦る音を耳で拾い、左手をずらした。  タツか……、杏奈か?  誰かが俺に近付いて来る気配がして、チラリと横目を向ける。 「高平 和奏先輩?」  ……え。  一瞬にして時が止まる。  視界に天使が映っていた。  ふわふわと風になびく髪を手で押さえて、白ゆりが俺を覗き込んでいた。  はっ!??  俺は即座に上体を起こし、僅かに後ずさった。  なんだなんだ?? 何でここに白ゆりが!?  まさか俺の妄想から抜け出してきたんじゃないだろうな!? 「あっ!」  白ゆりはつぶらな瞳をぱたぱたと瞬き、俺のすぐ前にしゃがみ込んだ。 「また描くんですね!?」 「……ハ?」  彼女が手にしたプリントを見て、ああ、さっきまで俺が見てたやつ、と冷静になる。 「あっ、ごめんなさい。いきなり」 「いえ……」  初めて聞いたけれど、リンと鈴が鳴るような、可憐な声だ。  ドキドキと心拍数が上がる。  何なんだコレは。ドッキリか?
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加