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勉の家は、大きくて古い作りのまさに日本家屋といった感じの家だった。
賃貸でもなさそうだし、最近引っ越してきたって感じの家には見えない。
僕が不審げな視線を送ってしまったからか、勉は困ったように頭を掻いて言った。
「ここ、おばあちゃんの家なんだ」
「おばあちゃんの?」
「うん。実は僕の両親、今、離婚調停中で、その裁判が終わるまで…ってことでおばあちゃん家に預けられてるんだ」
「り…りこん…ちょ……なん……って?」
「なんだそれ?」
その言葉の意味をすんなり理解できたのは、恐らくその場には誰もいなかっただろう。
「えっと……僕のお父さんとお母さん、別れちゃうんだって。それが離婚ってので。その手続き…だったかの話し合いの裁判をするから、それが終わるまでは家にいないほうがいいって言われて」
「離婚の理由は?」
「知らない」
「そう言えば、この間、母ちゃんが見てたドラマで言ってたぞ。あなた浮気したのね。離婚してやるって。それじゃねえのか?」
「……なっ!?」
大輔の指摘に僕と勉は目を剥いた。そして勉が慌てて否定する。
「浮気じゃない。それだけは違う」
「じゃあ、なんなんだよ?」
「わかんないよ。聞いても教えてくれないんだから。お父さんもお母さんも、いいからお前はおばあちゃん家に行ってなさいとしか言ってくれなくて……」
勉が力なくうなだれる。それを見て、突然、大輔が声を上げた。
「だったらさ、乗り込むか」
「え?」
「お前は嫌なんだろ。父ちゃん母ちゃんが別れるの。だったらその…離婚裁判とかってのに殴り込みかけて言ってやればいいじゃねえか。そんなのやめろって」
なんというか。
さすがだてにガキ大将を名乗ってない。
大輔の突拍子もない言葉に、僕たちは唖然とした。
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