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源氏FC。
地元ではそこそこ有名なサッカークラブ。
この街に引っ越してきてすぐ、僕、美作晋は、クラスメートの水無瀬の誘いに乗り、このサッカークラブに入団することを決めた。
綺麗に整備されたグラウンドを少年たちが駆け回っている。
「中学生は十五名くらい?」
「そうだな。この間三年生が受験だからってごそっと抜けちまったから、それくらい。正確には十三名かな」
「違うよ。十四名。牛若丸が今日も来てないみたいだ」
そう言って僕達のほうに近づいてきたのは、水無瀬と同時期にこのクラブに入った狭山。
「牛若丸って?」
挨拶がてら聞いてみると、狭山は何故か苦虫を噛み潰したような顔をした。
「本名は源優貴。このクラブのオーナーの息子だよ」
なるほど。
源氏FCのオーナーの息子。源氏の御曹司。牛若丸。すごいあだ名だ。
「で、今日はその牛若丸は来てないの?」
「今日はってか、今日も、だけどな」
狭山の後ろから本多が顔を出してそう言った。本多もこのクラブの一員で、水無瀬の親友だ。
「牛若が休むのはいつものこと。しかも来たってまともに練習やんないし」
吐き捨てるような本多の言葉に、僕は耳を疑った。
「練習…やらないの?」
「やんない。やんない。サボってばっか」
「来ても、今日は見学でお願いします、とか平気な顔で言うんだぜ」
「それって、お父さんがオーナーだから無理やり入らされたとか?」
「違う。逆だよ逆」
みんなの話を集約すると、元々このクラブは源氏FCじゃなく地域協賛の街の名前が付いていたらしい。それが牛若丸…じゃなく源優貴が入ってきたことをきっかけに父親が多額の寄附をするようになり、結果、源氏FCに変更され、源の父はオーナーに収まったということだった。
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