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レースを敷いた銀のトレーに乗っているのは、イチゴのジャムとビスケット、小粒の氷砂糖、灰色の飴玉。
甘いものは大好き。かわいい見た目をしているとなおさら。子どものころから、甘いものが心の拠り所だった。
小さいころはこわいものがたくさんあった。おばけ、おとなの怒鳴り声、冷たい料理、枯れた花、開かない鍵のついた扉、それから、嘘をつく人。
でも、恋をしてからは何も怖くなくなった。毎日の食事が冷えたパンでも、世界中の人に嘘を吐かれていたとしても、私は幸せでいられる。私の右手を柔く握る、この白い手さえあれば。
「今日はすごくいい天気よ。きっと洗濯物もよく乾くわ。あ、そうだ、アイスクリームでも作ろうかしら。好きよね、オレンジのシャーベット」
淡いピンク色の毛布にくるまっている彼女は、大きなクッションにもたれたままで何も言わない。薄い手のひらが、私の指を包む力を少しだけ強めた。
「心配しなくても大丈夫よ。昨日の本の続きは、ちゃんと読んであげるから。ああ、そうだ。あなたに手紙が届いていたの。後で一緒に読みましょ」
ゆっくり、震えながら頷く姿が愛おしくて、思わず小さな手を両手で包む。陶器のように滑らかな、絹のように柔らかな、蝋のように儚げなその甲にそっとキスをした。
「大好きよ。今日も愛してるわ」
乾いた唇が小さく開くのを、人差し指で遮る。
「ううん、いいの。言わなくて。ちゃんと伝わっているから」
顔をほころばせて、私はモモのように鮮やかな色が滲んだ頬をそっと撫でた。その目に詰まっているのは、イチゴのジャムとビスケット、小粒の氷砂糖、灰色の飴玉。
私たちの気持ちは一つよ。恐れることなんて、何もない。
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