藤華

1/6
前へ
/6ページ
次へ

藤華

某県某所にある、有名な公園が存在していた。毎年、春には観光客で賑わいを見せていた。しかし、今年はコロナウイルスとか言う、変な病気が流行してかその公園には、人が一人も寄せ付けては来なかった。 その公園の名前はーーー【藤の花公園】という。 そんなある日のこと、藤の花公園に咲いている無数の藤たちが、ざわざわとしていた。 「ねえ、今日はなんで人が来ないのかな?」 一輪の藤が隣に咲いている藤にそう聞いた。 「分からない」 隣に咲いている藤がそう答えた。 「そっか……」 一輪の藤が少しションボリしたように、風に揺れる。すると、一輪の藤から少し離れた藤が、 「なんか! 今、ニンゲンの世界にヘンテコなが流行っているみたいだよー!」一輪の藤たちの会話が聞こえたのか、他の藤たちにも聞こえるような声で言った。 どことなく、得意げな様子の藤だ。 「ヘンテコなカゼってなぁに?」 一輪の藤の隣に咲いている藤が、離れた藤に聞く。 離れた藤がますます得意げな様子で、語り出した。 「あのね、なんかね、今ニンゲンの世界はね、カゼが流行っているんだって! だけどねそのカゼはただのカゼじゃないみたい」 他の藤たちも興味が惹かれたのか、離れた藤の話を聞いていた。 「じゃあどんなカゼなんだ?」 他の藤が離れた藤に聞く。 「それはね、“人をダメにするカゼ”みたいだよ」 「ヒトをダメにするカゼ?!」 離れた藤以外の藤たちが、さらにざわめき出す。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加