藤華

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一輪の藤が離れた藤に質問する。 「それって、人が来ないのもその“カゼ”のせいなの?」 「そうみたいだよ!」 「そうなんだ……。だから、おじさんも元気なかったんだ……」 一輪の藤が言う“おじさん”とは、この藤の花公園の園長である。毎日、藤たちに水やりをしに来る優しいおじさんだ。一輪の藤は、その優しいおじさんが大好きだった。 いつも、藤たちに話しかけていたからだ。言葉は通じないけど、表情を見れば楽しいのか悲しいのかが分かるほど、お気に入りのおじさんなのだ。 しかし、藤たちが言う“ヘンテコなカゼ”ーーーコロナが流行ってからは、毎日水やりをしに来るもどこか悲しい表情を浮かべていた。 いつもなら、元気で優しいおじさんであってからか、元気がないと一輪の藤は心配をしていた。 「大丈夫だよ、おじさんのことだから、すぐに元気になるよ」 隣の藤が一輪の藤を慰めた。一輪の藤は「そうだよね!」と明るく振る舞った。 すると、ウワサのおじさんが藤たちのところにやって来るのが見えた。 一輪の藤は「アレ?」と不思議に思う。 今日のゴハン(水)はもうもらったのに、なんだろ? それに、“アレ”は何? 「おじさん来たよ!」 隣の藤はうれしそうに一輪の藤に言う。 「……」 一輪の藤の心に違和感が生まれ落ちる。 ーーーなんだろ? 何かいつもと違う……。あ、そっか! おじさんの弟子たちもいるからか! 「ーーー……ーー……」 「ーーーー……ーーー……ーー」 何やら、おじさんと若い弟子たちが話し込む。 会話は聞き取れないし、何を話しているのかわからないが、ただならぬ不穏な空気を漂わせていた。
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